戻る R/C 空飛ぶドラえもん



空飛ぶドラえもん 「R/C 空飛ぶドラえもん」 のことは 新聞記事 (7月24日 朝日新聞) ではじめて知りました。

なにしろ 「ドラえもんか 鉄腕アトムか」 というくらい、 ドラえもん好きです。 すぐにもと思いましたが、 当初は入手できず、 半月ほどたってようやくご対面となりました。

ドラえもんのキャラクターグッズは星の数ほどありますが、 空を飛ぶというのは前代未聞。
これこそタケコプター、 一刻も早く飛ばした〜い!


空飛ぶドラえもん 空飛ぶドラえもん というわけで、 左は 「空飛ぶドラえもん」 の勇姿です。

のび太やしずかちゃんたちと一緒に、 楽しそうにふわふわと空を飛んでるドラえもん、のイメージとは少し違って、 「ぎゅい〜んっ」 という音とともに浮かび上がり、 みるみるうちに高く高く舞い上がります。

写真をクリックすると大きい写真が表示されますのでご覧下さい。
(以後、 マークがあるものはすべて、 クリックすると大きい写真が表示されます。)



左はタケコプター、 いや、 空飛ぶドラえもんのローターおよびスタビライザーのクローズアップです。

メーカーは太陽工業、 ラジコンカーやヘリ、飛行機などを作っているメーカーのようですので、 このあたりはお手のものでしょうか。
(空飛ぶドラえもんと仕様がそっくりの ラジコンヘリ もあるようです。ドラえもんが先なのかヘリコプターが先なのか、興味津々。)



空飛ぶドラえもんのスペックです。             

 ローター回転径 350mm 
 全高 310mm 
 全備重量 約 155g 
 充電条件  充電時間 約4分 
 モーター駆動時間          約 1分 
 操作可能距離 屋外 約10m 

こちらは非公式の測定値。                

 ローター回転数 (スタートボタンのみ)     約 1,460rpm 
 ローター回転数 (+ 上昇ボタン) 約 1,560rpm 




送信機です。

左の写真にあるのがスタートボタン。 これを押すとローターが 「70%」 のパワーで回転し、 裏側にある上昇ボタンを押すとフルパワーになって浮上します。
スタートボタンは押したままで、上昇ボタンを押したり離したりすることによってドラえもんをコントロールします。

送信機のプリント基板。

空飛ぶドラえもんはこの送信機も本体も充電器も、すべて片面基板の両面実装です。 これはその半田面 (表面実装面)

左下にあるのは TX2C ATS302T、 ラジコンカーの前進・後進・右折・左折・ターボ が制御できる IC らしいです。 空飛ぶドラえもんにはそこまでの機能は必要ないので、 その一部を利用しているようです。





さて、それでは空を飛ぶメカはどうなっているのでしょうか。

さっそく解体、 といいたいところですが、 しくみを知るために分解するのはいいとしても、 終わればやはり元に戻さなくてはなりません。
(私の場合、 おもちゃを買ってくる目的の大半は解体ですから、 戻せなくてもいい といえばいいのですが…。)

空飛ぶドラえもんは発泡スチロール製ですが、 ある程度の高さからの墜落にも耐えなくてはなりません。 (現に私も何度か墜落させて、 表面にアザやキズがたくさんできました。 それでも元気なドラえもん!)
ということは、 強度を保つために要所は接着剤で固めているのではないか。

案の定、 ドラえもんの側面にある継ぎ目に沿って、 そっとカッターの刃を入れても、 容易に前後に分かれそうにありません。
やむを得ず、 背中のいちばん目立たないところで切開して、 様子を見ることにしました。


この状態にするのに、 早くもバッテリーのところで前後がつながっている部分を切断しなければなりませんでしたが、 こうして観察してみると、やはり、少なくとも両肩のあたりでしっかり接着されていそうです。

さぁ、 覚悟を決めなくてはなりません。
ここで中止して患者にこれ以上の負担をかけないようにするか、 リスクはあるが目的達成のためにオペを続行するか。

で、 結論を述べると、 まぁ、 注意すればなんとかなるのではないか… 。




切開成功。

ドラえもんのちょうどまん中あたりにスイッチと充電用のコネクタ (中央の青い円形の部分) がありますが、 左の写真ではその上、バッテリーのところと、その下、モーターのところを切断しました。
頭部のギヤの枠も接着されていましたが、 これは難なく剥がせて、 無事ギヤ、モーター、制御基板が姿を現わしました。


で、 大好きなドラえもんをここまでバラバラにして、 何がいちばん見たかったかというと、 二重反転ローターのギヤのしくみでした。

斯様なことはメカに詳しい方なら常識かもしれませんが、 私の常識はバランスに欠けていて、 そもそも二重反転ローターを見たのもこれが初めてです。
(しかし、 ドラえもんに、 ヘリコプターみたいな尻尾をつけないで空を飛ばせるには、 やはりこれでしょうね。)


ギヤのクローズアップ。

左はモーターで、 これが反時計回りに回転します。 そうすると中央下の大きいギヤは時計回りです。 これと噛みあっている右の小さいギヤは反時計回り、その奥の小さいギヤは時計回り、 中央上の大きいギヤは反時計回りとなって、 なるほど二重反転ローターができそうです。
納得しました。




プリント基板。

やはり片面基板の両面実装です。
ジャンパー線は皆無ですが、 電解コンデンサがひとつ手半田でつけられているのは画竜点睛を欠きます。

IC の名称は削り取られているので詳細は不明ですが、 前述の通り、 送信機に使われている IC は TX2C ATS302T です。 インターネットで検索するとデータシートがあって、 読んでみるとリモコン玩具用の IC で、 受信機用の RX2C ATS302R とペアになっています。 送・受信ペアの IC なら、 ここにそれ以外のものを使うことはまず考えられません。


こちらはリード部品実装面。

おもちゃで、 日付入りの "QC PASS" というシールが貼られているのを初めて見ました。

もっとも、 こういう管理についての考え方は各社様々です。
ユーザーにはあまり目立たないようにしているところ、 目立つ目立たないは気にしないところ、 品質管理そのものを気にしないところ…。




最後は充電器。

単二乾電池を8本使います。
最初は 「え、何でそんなに?」 と思いましたが、 一度ドラえもんを飛ばすと、 これも納得できます。
軽い (約 160g) とはいえ、 ドラえもんが 「ぎゅい〜んっ」 と飛ぶのです。
なんとなく、 これくらいのパワーは要りそうだ、 という気はします。

裏面の電池カバーはネジ止めです。 単二8本といえばかなりの重量です。 よくあるパッチンと止める蓋では、 ちょっと落としただけでもバラバラになりそうですから、 ネジ止めはいいのですが、 ここはやはり ドライバーのいらないネジを使ってほしかった…。




無事退院して、 また飛ぶべく充電中のドラえもんです。

よく見ると、 背中の傷跡が痛々しい。



ときには疼くこともあるけれど、 日常生活や、 空を飛ぶのに支障はないそうです。
ドラえもん曰く、
「ぼく、 元気だよ。 空をとんでる動画もあるから、 みんな、 見てね。」






それにしても、 つくづく、 よくこれが飛ぶもんだと思います。

電流密度の高い二次電池、強力な磁石、集積回路。
それに、 ドラえもんを飛ばそうという心意気…。

こうしたものが揃って、 はじめて、 飛ぶんでしょうね。





情報処理概論 に戻る  情報余話 に戻る  戻る

*1 ミルククラウンを撮る で使った光センサの、 フォトトランジスタをギアの間に挿入できるように改造してギアの回転数を測りました。
下図はその例で、 ギヤには6個穴があいていますから、 光が6回遮られる (あるいは通過する) 時間がギア1回転に要する時間です。 横軸1目盛は 5msec なので、 1回転はこの場合約 40msec、 1,500rpm で回転していることになります。
ローターの状態等によって回転数はかなり変動するようです。 表には測定した範囲での最高値を記入しましたが、 上昇ボタンを押すと 約10% 程度回転数が増えるようですから、 上昇ボタンを押したとき、 条件がよければ 1,600rpm 以上で回転しているかもしれません。

update: 2005.09.15  address