戻る 電気炊飯器



電気炊飯器は1955年、 「自動式電気釜」 という名前で初めて商品化されました。


お米をといで約 20 分間沸騰させるとご飯が炊けますが、 だからといって、 タイマーをつけただけではうまくいきません。 米や水の量、 気温などによって沸騰するまでの時間が違うためで、 焦げついたり、 芯のあるご飯ができたりします。
そこで 「自動式電気釜」 は釜を二重構造にし、 内釜と外釜の間に 20 分で蒸発する分量の水を入れることでこの問題を解決しました。 沸騰して 20 分たって、 水が蒸発してしまうと温度が上がり、 サーモスタット が作動してスイッチが切れるようになっていました。


電気炊飯器の外観 電気炊飯器の内部 制御基板
電気炊飯器の例 電気炊飯器の内部 制御回路プリント基板

現代の “自動式電気釜” は、 温度センサとマイクロコンピュータによってこの問題を解決しています。

上の写真は電気炊飯器の一例で、 制御回路のプリント基板の 中央右寄りに斜めに取り付けられているのが 1 チップのマイクロコンピュータです。
ここで使われているのは 4 ビットのコンピュータですが、 IC にはセンサの信号をディジタル化するA/D変換器やタイマー、 液晶ディスプレイの駆動回路など、 炊飯器の制御に必要な機能がすべて集積されています。




下図はある電気炊飯器の炊飯例です (上の炊飯器のものではありません)

ご飯をおいしく炊く秘訣は昔から、 「はじめちょろちょろなかぱっぱ、 じゅうじゅうふいたら火を引いて、 (藁しべ一束くべたらば、) 赤子泣いても蓋とるな」 と言い伝えられています。
この炊飯器では、 それがちゃんと守られています。



スイッチを入れると、 まず水温が約 50℃ になるまでヒーターが ON にされます。 これがお米に水分を吸わせるための 「はじめちょろちょろ」 期。
約 10 分待って 「なかぱっぱ」、 本格的にご飯を炊き始めます。
「じゅうじゅうふいたら」 火を引きます。 ヒーターの ON と OFF を繰り返して、 火力を約 3/4 にします。
しばらく待って約 5 秒だけヒーターを ON にして 「藁しべ一束」 くべたのち、 蒸らしのため、 赤子泣いても蓋をとりません。

おいしいご飯を炊くのはけっこう難しいものですが、 お米を磨いでスイッチを押すだけ、 40 分ほど待てば炊きあがります。
マイクロコンピュータと温度センサが、 一切を引き受けてくれています。




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*1 熱膨張率の違う金属を張り合わせた 「バイメタル」 とスイッチを組み合わせたもの。 温度が変わるとバイメタルが変形し、スイッチが作動する。

このページの自動式電気釜の写真は、 「
東芝科学館 - 東芝一号機ものがたり:わが国初の自動式電気釜-」 (http://kagakukan.toshiba.co.jp/history/1goki/1955cooker/index.html) より引用・転載させていただきました。

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2012.11.06  address