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Z1 |
バベジの解析機関 以後 100 年間、
新たに機械式の自動計算機を試みた者はいませんでした。
また仮に誰かが完成させたとしても、 10 進数演算の機械式ではあまりにも複雑で、
費用やサイズ、 重量、 安定性、 保守などの諸点から見て現実的ではありません。

Konrad Zuse
コンラッド・ツーゼ
(Konrad Zuse)(1910〜1995) は
軍用機などを生産していたヘンシェル社の技術者でしたが、
航空力学に必要な膨大で単調な計算に辟易していました。
そこで自動計算機の製作を計画し、 1936 年から 38 年にかけて、
10 進数ではなく 2 進数を、 歯車ではなく薄い金属板製のカムを採用した計算機、 Z1 を製作しました。
上図は Z1 の論理素子の一例です。
長円形、 あるいは L 字型の穴が開けられた金属板 “Fixed plate”
a、 “Control plate”
b,
c、 “Intermediate plate”
e、 “Impulse plate”
d と “Result plate”
f が、
一番下の断面図のように組み合わされています。
機械式のカムなので、 安定に動くように
d,
f を中心にして
e、
b,
c、
a が上下対称に配置されています。
a (Fixed plate) はその名の通り動きませんが、
他の金属板は長円形や L 字形の穴の幅で許される範囲で上下、 あるいは左右に動くことができます。

は金属板をガイドするための固定されたピンですが、

は金属板の動きを伝えるためのピンです。
金属板の動きに応じて位置を変えます。
いま、 上図の “Impulse plate”
d (黄色の板) をマウスでクリックすると、
これが左右に動きます。
d には L 字型の穴があって、
d は
e (ピンクの板)
とピンでつながっていますから、
d が動くと
e も動きます。
e はさらに
f (黄色の板) ともピンでつながっているので、
結局、 “Impulse plate”
d の動きは “Result plate”
f に伝わります。
ここで “Control plate”
b (薄緑色の板) をクリックするとこれが下がり、
この状態で
d をクリックしても、
e とつながっているピンは動かないので
f も動かなくなります。
このようにして、 “Control plate” によって “Result plate”
f を動かしたり、動かなくしたりできます。
このように、 金属板のカムに I 型、 L 型の穴をあけて組み合わせると、 様々な論理素子ができます。
Z1 はそれらの論理素子の組み合わせによって演算装置が作られています。
Z1 にはこのような部品が約 2 万個使われていますが、 ツーゼは糸鋸とヤスリで、 ほとんど独力で作ったそうです。
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ワード長 | 22ビット (仮数部 14ビット、指数部 8ビット)
| 演算ユニット | 22ビット浮動小数点演算
| プログラム | テープ読み取り式
| クロック周波数 | 1Hz
| 計算速度 | 乗算約5秒
| 出力 | 10進数
| 消費電力 | 約1kW(モーター用)
| 重量 | 約500kg
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Z1 はパンチテープ (テープには使用済みの映画用フィルムが利用されています)
でプログラムを与えて、 22ビットの浮動小数点演算ができる、
言うまでもなく世界で最初の、 本格的な科学技術計算ができる計算機でした。
Z1 のクロック周波数は 1Hz、 乗算に要する時間は約 5秒です。
バベジの夢が100年後、 Z1 によって初めて実現されたのです。