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CD は光の、 「波」 の性質を巧みに利用して、 音声データを記録、再生しています。

水面の2つの波の干渉


波の性質という点では、光の波も水面の波も同じです。
水面に広がった2つの波が出会うと、 重なった部分では特徴のある模様が見られます。
これは波の 「干渉」 の結果で、 膨らんだシャボン玉に虹色の模様がつくのも、 チューニングが狂っている2つの楽器の音が 「うわぁ〜ん うわぁ〜ん …」 と唸って聞こえるのも、 いずれも波の干渉によるものです。
干渉は水面の波、 光の波、 音の波を問わず、 よく見られる一般的な現象です。




下図は CD の断面を拡大したものと思ってください。
左が CD のピットや反射層、 レーベルの印刷層などがある側で、 右は透明な樹脂の円盤です。
右からレーザーの光を当ててデータを読みとります。

下部中央にある Start ボタンをクリッすると、 光の 「波」 が現れて左に進んでいきます (これはレーザの光と思ってください)
上下の2本の 「波」 は波の山と山、 谷と谷とがぴったり揃っています。 これを、 位相 (phase) が 「合っている」 とか 「揃っている」 といいます。

下図左のグレーの長方形は鏡で、 光はここで反射されて右に戻っていきます (入射光は灰色で、 反射光は赤で表示されます)

鏡の下にある 矢印 ボタンをクリックすると、 鏡の反射面が一部左右に移動します。
入射光の位相が揃っていても、 鏡面の位置が変わると反射光 (黄色で表示) の位相がずれます。 光の位相が変わると、 干渉した光の振幅や位相に影響が現れます。





波の山から山まで、谷から谷までなど、波の位相が等しい二点間の長さを 「波長」 といいます。

下図左は反射光も位相が揃っているので、 これらは干渉すると振幅が大きくなって明るく見えます。
これに対して右は、 一方の鏡面が 1/4 波長だけ手前にあるため、 反射光の位相が 1/2 波長分ずれています。 これらの光が干渉すると、 打ち消し合って見えなくなります。
位相差なし
位相が揃っているので、 干渉光は明るい
1/2波長の位相差
1/2 波長の位相差があるので、 干渉光はうち消される
上図左は CD プレーヤーのレーザービームがすべてピットのない部分 (ランド) に当たった状態、 右はビームの一部がピットに当たっている状態です。 このようにして、 CD プレーヤーはピットの有無を反射光の明暗で検出しています。




CD は直径 12cm、 厚さ 1.2mm のポリカーボネート樹脂製の円盤です。
下図左は断面図ですが、 円盤の表面には 0.11μm の凹凸があり、 これにデータが記録されています。 これを 「ピット」、 ピットでない部分を 「ランド」 といいます。
ピットの幅は 0.5μm 、 長さは 0.83μm 〜 3.56μm で、0.3μm ずつ長さが違うものが 9 種類あります。 このようなピットの列が 1.6μm の間隔で螺旋状に刻まれています。

その上に (図ではウンと厚く描かれていますが) 同程度の厚みのアルミニウムの膜があります。 これが光を反射させる鏡の役割を果たします。
その上に 20μm ほどの保護層があって、 更にその上のコーティング層に CD のタイトルなどが印刷されています。
コンパクトディスク断面図
コンパクトディスク の 断面図     
ピットとレーザビーム
コンパクトディスク の ピット と レーザビーム
CD のデータを読みとるために、波長 780nm の赤外線レーザが使用されています。
ポリカーボネート樹脂の屈折率は 1.55 ですから、 樹脂の中ではレーザ光の波長は 780nm ÷ 1.55 ≒ 500nm になります。
この波長の 1/4 は 125nm ですが、 CD のピットの深さは 110nm (0.11μm)、 干渉で完全には光が消えない値が選ばれています。

レーザ光はデータの記録面で直径 1.7μm に絞り込まれますから、 上の右図のような状態でピットに当たります。 ピットに当ったレーザ光とランドで反射したレーザ光には約 1/2 波長の位相差があるため、 反射光は干渉によって暗くなります。
CD のピットはわずか 0.11μm しかありませんが、 光の干渉の性質をうまく利用して検出されています。




以下は余談。

μm や nm という長さは私達にはピンときませんから、 すべて 1,000倍にしてみると想像しやすくなります。
1,000 倍すると、 CD は直径 120m、 厚さ 1.2m の巨大な円盤になります。 東京ドームの外野センターまでの長さが 122m だそうですから、 ほぼあのクラスのサイズです。
その表面に幅 0.5mm、 長さ数 0.8mm から 3.6mm の細かいピットがあります。 「シャープペンシルで描いた太さの、 短い線の列」 といった感じでしょうか。 ピットの深さは 0.11mm です。
ピットの列は 1.6mm の間隔で、 螺旋状にぎっしり (東京ドームにいっぱい) 刻まれています。
このピットの情報を厚さ 1.2m の透明な円盤の上から、 レーザの光をレンズで 1.7mm に絞って読みとっています。




もうひとつ余談。

CD の命はピットです。
断面図で分かるとおり、 ピットの上には 0.1μm 程度の厚さのアルミニウムの膜があり、 その上には 20μm 程度の厚さの保護層があって、 その上にレーベルなどが印刷されています。
取り扱うときにはプラスチックの面にキズや指紋がつかないように注意しますが、 実はピットは、 こちらの面からは 1.2mm もあるポリカーボネート樹脂で 「保護」 されています。
ところがレーベル面の保護層はわずか数 10μm しかありません。 レーベル面に硬いものを落としたりすると、 ピットはひとたまりもありません。
試しに、 不要になった CD-ROM などのレーベル面を、 尖ったもの (カッターナイフなどでもよい) で軽く擦ってみて下さい。
あっという間に保護層にもアルミの反射層にも傷がついて、 ひどいときはピットも削り取られて回復不能のダメージを与えます (表面のキズなら研磨で助けられることもあります)
くれぐれも CD のレーベル面は大切に…。




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update: 2012.11.14  address