戻る 化合物半導体は男と女  (半導体)


同じ物同士では、 幾ら足しても掛けても割っても、 同じものしか生まれない。 金太郎飴は切っても切っても、 同じ金太郎しかが出てこない。 しかし、 違った物が二つあると、 それらを掛け合わせると、 また異なった物が生まれて来る。 酒と果汁を混ぜるとリキュールが生まれる。
 男と男。 女と女。 ゲイやレズ同士では、 幾らたっても何も生まれないが、 男と女では子供が生まれる。 父親と母親の性質の一部ずつを受け継いで、 そのいずれとも同一ではない子供が生まれる。
 雌雄の別のない無性生殖から、 雌雄分離した有性生殖に変化することによって、 生物は爆発的に進化した。

元素の周期律表 (部分)
        1B 族  2B 族  3B 族  4B 族  5B 族  6B 族 
第2周期
第3周期AlSi
第4周期CuZnGaGeAsSe
第5周期CdInSnSb

 私には、 3−5族化合物半導体は、 有性生殖する男と女を連想させるもののように思えてならない。
(元素の周期表の縦の系列は、 通常、 T,U,V,W,Xなどのローマ数字で表すが、 ここでは見安いように、 2,3,4,5などのアラビヤ数字で記す)

 絶縁体と導体との中間にある (境界領域にある) 半導体は、 本来は4族の元素のものである。 炭素 (C) 、 シリコン (Si) 、 ゲルマニウム (Ge) など。
 ところが、 3族 (硼素B、 アルミニウムAl、 ガリウムGa、 インジウムInなど) と、 5族 (窒素N、 燐P、 砒素As、 アンチモンSbなど) を結婚させて、 その間に子供を産ますと、 3と5との中間の4族のようになるのではあるまいか。
 かくて、 3―5族化合物半導体 が生まれた。 (ガリウム砒素 GaAs、 インジウム燐 InP など)
 私には5族が男、 3族が女のように思われる。 4族よりも外殻電子が一つ多い5族は、 イザナギノミコトが 「成り成りて成り余れる所あり」 とのたまった男性であり、 4族よりも外殻電子が一つ少ない3族は、 イザナミノミコトが 「成り成りて成り合わざる所あり」 と云った女性である。
(ちなみに、 聖書ではエホバの神は、 天地創造の8日目に、 アダムの肋骨を一本取って、 それを用いてイヴを作ったと述べているが、 これでは男であるアダムの方が一本不足することになってしまい、 逆である)
 多様性 (ダイバシティdiversity) が進化を生む。 雌雄分離して生物が大進化をしたように、 半導体も男女に分離して、 それが合体して進化して、 発光ダイオードなどを生んだ。
 


かくては更に、 2―6族化合物半導体 も作られてゆく。 セレン化亜鉛ZnSeや、 酸化亜鉛ZnOなどである。 (亜鉛Znは2族、 酸素O、 セレンSeは6族) 。 (―2) と (+2) の結合である。 それは我々を青色発光ダイオードへと導いた。
 これは云うならば、 染色体がXXYのスーパー男性と、 染色体がXXXのスーパー女性の結婚である。 男の性がムンムンと臭う超男と、 女らしさがフクイクと香る超女。 サムソンとデリラの愛である。

 「あぁ、 多様性は素晴らしい。 ダイバシティ、 ダイバシティ」 とばかりに、 その道を更にひた進んで、 3元化合物半導体に至る。
2−6族化合物半導体の2族の方を、 1族と3族に置換えて、 1−3−6族化合物半導体 が作られる。 Cu-Ga-Sなどである。
更には、 この1−3−6族半導体の1族を、 0ゼロ (空格子点) と2族とに置き換えて、 2−3−6族化合物半導体 が作られる。 Cd-Ga-Sなどである。 こうなると、 もう多様性も極まって、 人種の坩堝とでも云うべきであろうか。 それらはいま、 太陽電池のエネルギー変換効率高めるために盛んに研究されているらしい。

4族のシリコンだけにこだわっていては、 何の進歩もない。 純血性必ずしも是ならず。 多様性の中に未来と発展があることを、 それらは示してくれているのでは。
それにしても、 4族のシリコンから出発して遂にここまで来た。 そぞろに思う。 “はるばると来つるものかな”との感慨である。

多様性は素晴らしいと云うけれど、 ただ単に 「いっぱいあってな」 では何の意味もない。 動物園には色々な動物がおり、 水族館には様々な魚がいるけれど、 それだけで何かの進化があったと云う話はない。 多様性が進化を生むためには、 多様なものが交流し合わなければならない。 肉体的交流ならずとも、 心の交流があることが必要である。
人間は、 いや生物は、 その種を守るために、 異種のものを排除するのが常である。 人種同士も、 異族に対してとかく 「ヘイト」 (hate) する。
 そもそも生物は、 その免疫機能によって異物を排除するように出来ている。 従って、 交流し合うためには、 ある種の近親性・近似性 similarityが必要なのだろうか。 あるいは、 ヘイトしようという心を乗り越える心が必要なのだろうか。



情報処理概論 に戻る   情報夜話 に戻る   戻る