戻る 赤ん坊の泣き声の解読 (情報処理)


 私が住む町に 「夜泣き地蔵」 と呼ばれるお地蔵さんがある。 その名の由来は次のようであった。
 昔、 一人の男がいた。 その男の妻は赤ん坊を生んで直ぐに死んでしまった。 男は近所で貰い乳をしながら赤ん坊を育てた。 しかし、 夜になって赤ん坊が泣き出すと、 乳を貰う家も寝静まり、 頼むことも出来ない。 彼は仕方なく赤ん坊をあやしながら夜の道をトボトボと歩き回る。 しかし、 赤ん坊は火が付いたように、 泣いて泣いて泣き止まない。 ところが、 そのお地蔵さんの前まで来ると、 不思議なことに赤ん坊は、 ぱったりと泣き止む。 次への夜もそうだった。 その次の夜も・・・。 こうして、 いつしか、 そのお地蔵さんが 「夜泣き地蔵」 と呼ばれるようになった。 これが言い伝えである。
 江戸川柳 「柳多留」 に、 「南無女房、 乳を飲ませに化けて来い」 と云うのがある。 名作である。 読む人の目頭をジーンと熱くさせる。 「夜泣き地蔵」 も、 その前を通ると泣き止むのではなく、 泣き止んで欲しいと云う切なる願いではなかろうかと、 私は思っている。

「夜泣き疳の虫」 と云う言葉がある。 赤ん坊はとかく夜泣きする。 夜中にふと目を覚ますと、 激しく泣き出す。 昔は、 疳の虫と云う小さな虫が、 赤ん坊の体の中に棲み付いているからだと考え、 これを体から追い出す薬が売られたりしていたとか。

 若い母親は、 夜泣きに限らず、 赤ん坊の泣き声に悩まされる。 電車の中ともなると、 もう悲壮である。 乗り合わせた乗客からの冷たい視線、 嫌がらせの言葉。 ・・・どうすれば泣き止むのか。 ・・・
 赤ん坊が泣くのは、 泣くことによって、 何かを母親に伝えようとしているのだから、 その何かが理解できればよいのだが、 ・・・その何かがわからない。 母親はオロオロするばかり、 ・・・。
 情報は発信されても、 受信者がそれを理解し解読できなくては、 何の役にも立たぬ。 「理解できねば異国の言葉、 未知の暗号」

 最近の研究によると、 生後0〜3ヶ月の新生児の泣き声は、 意志を表明するための言葉であり、 その言葉は国籍・ルーツに関係なく万国共通であって、 5つの種類から成っている言葉であると云う。 そして、 その5つのベビー・ランゲージ (baby-language) は次の通りであると云う。

赤ん坊の泣き声


この分類は、 オーストラリアのダンスタン (Dunstan) と云う女性が発表したものであるが、 私には必ずしも、 これが完全なものとは思えない。 さしずめ、 夜泣きの声はどこに入るのか?

 しかし、 それはともかく、 「解読されない情報は、 空吹く風」 と云うことだけは確かである。



情報処理概論 に戻る   情報夜話 に戻る   戻る

(付記) 犬の鳴き声を解読する玩具として、 タカラトミーがバウリンガル (Bow-Lingual) と云う物を発売している。 猫用もあってミャウリンガル (Meowlingual) と云うそうだ。
(主な参考文献) Dunstan Baby Language -Wikipedia, the free encyclopedia