資料シート●各科目

写真銃
Photographic Gun

http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/bookshelf/P/PhotoGun.html




 Marey(マレー、Étienne-Jules 1830-1904=偶然にもMuybridgeと同じ。▽図)は、動物の運動を研究していた。



([Denton]より)

 Mareyは、鳥や虫の運動を観察するために、連続撮影(=1秒ぐらいのほんの短い時間に連続して何枚もの写真を撮ること)ができる特別なカメラの開発を始めた。
 開発を始めてすぐ、イギリスでMuybridge馬のギャロップの連写に成功したことを知った。そこで、MareyはMuybridgeに頼んで鳥が飛ぶのを撮影してもらったが、うまくいかなかった[Denton]。Muybridgeの装置はあまりに大掛かりで、鳥や虫のような小さくて素早い動物には向いていなかったためだ。
 こうした経験を経て、Mareyは自由に持ち運べて取り回せる独自のカメラを開発しなければならないと感じたのだろう。

 Mareyが発明したカメラは写真銃(Photographic Gun)とよばれた。その名のとおり、ライフルのような姿をしていて、使い方もある意味でライフルに似ていた(▽図)。

 

([Denton]より)

 写真銃は使い方もライフルにそっくりだった。
 照準を対象に向けて引き金を引くと、弾倉(magazine)に装填したディスク(▽図)に連続写真が撮影されるようになっていた。
 射撃するごとに、1秒にわたって12枚の連写が同じ間隔(=1/12秒)で行なわれるようになっていた。それらの写真は1枚のディスクを使い切るようにして記録された。弾倉には、あらかじめ25枚(=25回の射撃に対応)のディスクが装填しておけるようになっていた。
 像がブレて写らないように、それぞれの写真の露光時間は1/720秒(今でもふつうのカメラではそこまでできない)にまで短縮された。



([Denton]より)

 Mareyのディスクの支持体は最初は紙だった。しかし、Eastmanがセルロイドのフィルムを発表したので、のちにはそれを撮影に使うことも考えるようになった[Parkinson]
 Mareyは、このカメラの仕掛けをそもそもライフルの技術に基づいて考え出した。露光やディスクの回転はぜんまいモータで動作するようになっている。銃身にも、くっきりした写真が撮れるように対象の方向からの光だけを受ける(弾が出る代わりに)という役目がある(照準を支持するという役目も)。

 Mareyはこのカメラを使って次々と連続写真を撮影した(▽図)。Mareyはこのような写真をクロノフォトグラフ(Chronophotograph=時間写真)とよんだ。そして、それをもとにして、多くの論文や写真集を発表した。



[Chronophotograph]より 棒高跳び(Marey, 1890)
([藤村]より)



[Chronophotograph]より ペリカン(Marey, 1882ごろ)
([Wikipedia]より)

 Mareyのカメラぐらいの性能があれば、ビデオとして再生することがぎりぎり可能なペースでフレームを撮影することができる。2/3秒しか撮影できないという制約はあったが、折りしもフェナキストスコープに始まる循環型ビデオシステムが爆発的に発達していった時期だったので、これらのシステムのためのタイトルなら十分に撮影できたはずだ。しかし、Mareyはこのカメラをあくまで特殊なスチルを撮影するための道具だと考えていた。
 それでも、Mareyの考え方は、直後のEdisonのキネトグラフやLumiére兄弟のカメラ/プレーヤ(ミシンをメタファにしたと言われているが)にもしっかり引き継がれている。これらの新しいカメラでMareyのものよりもよくなったところといえば、記録体がディスクからフィルム(帯)に替わって撮影できる時間が大幅に伸びたことと、銃身が省略されたことの二つぐらいだ。

 写真や映画を撮影することを"shoot"と言うが、Mareyのカメラがライフルをメタファとして作られていたことを考えると、その対応がおもしろい。




もっと知りたい人のための資料

Wikipedia
Étienne-Jules Marey
(http://en.wikipedia.org/wiki/%C3%89tienne-Jules_Marey 06-06-08)


参照/引用させていただいた資料

藤村克裕
美と創作シリーズ
造形の基礎を学ぶ
(角川書店, 98-05-20)

Gillian Denton (project editor), et al
Eyewitness Guides
Cinema
(Dorling Kindersley Limited, 1992)

David Parkinson
History of Film
(95)



コンピュータ


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