ミュートスコープ(Mutoscope)は、映画以前のビデオシステムの一つで、巡回型のアニメーションを見ることができる。Casler(Herman, キャスラー)が1894年に発明した。そして、95年からは商品として製造を開始した。
媒体は無数の紙を軸に綴じ込んだもので、1枚ごとにフレームの絵が描かれている。これをモータで回転させてビデオとして再生して見せるようになっていた。原理は基本的にフリップブックと変らない。
Caslerは、公共の場所に専用のプレーヤ(▽図)をいくつも設置してソフトウェアをマウントしておき、誰もが有料で見られるサービスを行なった。
ミュートスコープで重要なのは、それが売り切りではなく、上演サービスとして提供されたことだ。
フェナキストスコープや
プラキシノスコープは、裕福な階級でなければ使えなかったが、ミュートスコープは誰でも見ることができた。そもそも、これらの原型が提供するビデオは、時間がとても短く(ミュートスコープではかなり改善されたが)、それを見るために高い金額でプレーヤやソフトウェアを買い取らせるのには無理があった。
おもちゃとしての
フェナキストスコープ、ホームシアタとしての
プラキシノスコープに対して、ミュートスコープは街中の劇場として機能することを目指した。
ミュートスコープとよく似た技術に
Edison(エジソン)の
キネトスコープ(Kinetoscope)がある。ミュートスコープと
キネトスコープとは全く同じ時期に発表されたので、たがいに競合する関係にあった。
キネトスコープは担体として
35mmフィルムを使い、ビュアの内部のスクリーンに映写した像を見せるようになっていた。そのため、時間の長い(と言っても知れてるけど)タイトルを見せることができた。
これに対して、ミュートスコープの長所は構造が簡単で製造や維持のコストを押えられる点にあった。