学習書●[情報処理]

演習
記数法
バビロニアの数字と記数法
報告

成毛牧子
(00年度履修生)

http://www.infonet.co.apt/March/syllabus
/Literacies/cariculation/gallery/Naruge.html




 前2000年頃に古スメル文字が楔形文字に変わり、数字についても、位取りがより徹底された楔形数字が出現した。それが下図である。

楔形数字

 楔形数字による記数法は、10進法を補助的に用いる60進法に基づいたものであり、2個の個別記号で一切の数が表示される。
 1を表す記号をAとし、10を表す記号をBとすると、60のn乗は全てAで表され、60のn乗×10は全てBで表される。(nは0または自然数)Aは9個まで。Bは5個まで並置できる。Aが10個でBになる。よって、2つの記号で表せる限界は59までであり、60以上はもう一つ上の位にA/Bの記号を置くことによって表す(▽図)。

楔形数字(詳細)

 2個の数字が並んでいる場合、それらはある位の数を表わしているとも取れるし、次位の位の数とも取れる。このような混乱を防ぐために、数字との数字との間の間隔が厳密に使い分けられている。間隔が広く空いているのは、位が異なる数字である。つまり、64を表したい場合は

楔形64

のように表した(=1,4=1×60+1×4=64)。

 ところで、楔形数字には0記号がない。よって、空位がある場合には、それが一桁だけなのかそれとも何桁か続いているのかは前後の事情から判断するしかなかった。前300年頃になって、0記号(▽図)が使われるようになったが、これはあくまで数字の欠けたところを補うためのもので、計算には用いられなかったようである。

0

 この60進法の記数法は主に天文学や数学のための専門的な数字で、日常使っていたのは位取りのない10進法だった。この記数法では百、千、...を下図のようにして表し、それぞれ一つの単位とした。また、100の倍数は、上位の数の左に低位の数を置いて、乗法的に表した。

百

 以上が古代バビロニアの記数法である。古代バビロニアの記数法は、現在のインド記数法に比べて、次のような短所がある。

・位の区別を間隔で行うため、どこまでが同じ位かわかりにくい。
・同じ記号の並置を用いるので読みにくい。
・10進法の場合、100万より大きい数は表せなかった。

 しかし、位取りの原則とその相対性(十分とは言えないが)により、古代世界において、バビロニア数学は強い計算力を誇った。加法/減法さらに乗法も、自然数と分数の区別なく筆算できた。位が明示されないために、小数点の位置を無視し、分数の計算を自然数の計算に置き換えることができたからである。これは、エジプトの記数法など、同じ時期の他の記数法では難しいことであった。そして、独自の代数学や幾何学を発展させるまでになったが、それらもやがて停滞してしまう。
 バビロニア人の発明した位取り法は、歴史的には偉大な発明である。この位取り法が、インドに伝わり、10進法化されていまの記数体系ができあがったのであるし、角度や、時間における60進法は現在でさえ使われ続けている。現代の私たちにとってさえ、古代バビロニアの記数法は、決して無関係ではない。

補足
バビロニア以前のメソポタミア地域における数字の変遷

 メソポタミアでは、前3000年頃シュメール人によって、最も古い数字が作られた。それは細長い棒の先を粘土板に押し付けたもので、下図のようなものだった。

穀物数字

 この数字は基本的には10進法に基づいているが、300を表わす大きな "D" が用いられていたという点が独特である。300を表わす文字の存在は、穀物を量る升の単位と関係があると考えられ、この数字の体系は穀物数字とよばれている。

 穀物数字から少し発展したのが、古スメル文字(▽図)であり、60進法と10進法が混ざっている。また、大きさは異なるが、同じ半円で1と60をしめすところに位取りの萌芽が見られる。
*位取りは同じ記号が異なる位の異なる数値を表すことで、そろばんの同じ形の計算珠が、位置によって異なる数値を示すことを考えるとわかりやすい。

古スメル

 この数字が前2000年頃に楔形文字に変化したと考えられている。

参考文献

近藤洋逸、数学の誕生:古代数学史入門、(現代数学社、1977)
カジョリ、初等数学史(上) 古代中世、(共立出版、1970)



このページの記事は、科目[情報処理]を履修した学生が課題[記数法]の学習の一環として作成した著作物(オリジナル:http://www.ipe.tsukuba.ac.jp/~s000091/kougikadai.html)に加筆したものです

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