資料シート●各科目
Marayのカメラ
写真銃
http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/bookshelf/M/MareyRifle.html
Marey(マレー、Étienne-Jules 1830-1904。▽図)は、もともと、人の循環系を研究する医学者だったが、さらに一般の動物の運動にまで興味を広げるようになった。
1867年に、Mareyは馬の運動を計測して記録するシステムを発表した。これは、馬の足に取りつけることができる筋肉の運動の測定器と、同じ馬に積める大きさの記録器とから構成されていた(▽図)。このシステムによって初めて、いろいろな走り方で馬を走らせた時の馬の姿勢の変化が調べられるようになった。
この成果に基づいて、デューセは走っている馬が実際にはどのような姿勢になっているかを表す多くの図を描いた。デューセが描いて見せた、ギャロップする馬の姿(▽図左)は、それまで信じられていた姿(同右)とあまりにも違っていた。そのため、デューセの絵は間違って描かれていると考える人と、正しいと考える人との間に論争が起り、それがMuybridge(マイブリッジ)の研究のきっかけになった。
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([Denton]より引用)
Mareyは、鳥や虫の運動を観察するために、連続撮影(chronophotography。=1秒ぐらいのほんの短い時間に連続して何枚もの写真を撮ること)ができる特別なカメラの開発を始めた。
開発を始めてすぐ、イギリスでMuybridgeが馬のギャロップの連続撮影に成功したことを知った。そこで、MareyはMuybridgeに頼んで鳥が飛ぶのを撮影してもらったが、Mareyは満足できなかった。Mareyは一定の時間ごとに姿勢の変化が記録されることを望んでいたが、Muybridgeはそれが重要だとは考えていなかったし、実際にも、当時のMuybridgeの方法ではそれを実現することはできなかった。こうして、Mareyは独自のカメラを開発しなければならないと考えるようになった。
Mareyが発明したカメラはライフルのような姿をしている(▽図)。
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([Denton]より引用)
使い方もライフルにそっくりで、照準を対象に向けて引き金を引くと、弾倉に装填したディスク(▽図)に連続写真が撮影されるようになっている。そして、2/3秒の間に8枚の写真を撮影することができる。
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([Denton]より)
Mareyは、このカメラの仕掛けをそもそもライフルの技術に基づいて考え出した。露光やディスクの回転はぜんまいモータで動作するようになっている。銃身にも、くっきりした写真が撮れるように対象の方向からの光だけを受ける(弾が出る代わりに)という役目がある(照準を支持するという役目も)。
Mareyはこのカメラを使って次々と連続写真を撮影した(▽図)。そして、それをもとにして、多くの論文や写真集を発表した。
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([Wikipedia]より)
Mareyのカメラぐらいの性能があれば、ビデオとして再生することがぎりぎり可能なペースでフレームを撮影することができる。2/3秒しか撮影できないという制約はあったが、折りしもフェナキストスコープに始まる循環型ビデオシステムが爆発的に発達していった時期だったので、これらのシステムのためのタイトルなら十分に撮影できたはずだ。しかし、Mareyはこのカメラをあくまで特殊なスチルを撮影するための道具だと考えていたらしく、ビデオの制作に使おうとはしなかった。
それでも、Mareyの考え方は、直後のEdisonやLumiére兄弟のカメラ(ミシンをメタファにしたと言われているが)にしっかり引き継がれている。変更されたのは、記録の担体がディスクからフィルム(帯)に替わって撮影できる時間が大幅に伸びたことと、銃身が省略されたことの二つだ。
写真や映画を撮影することを"shoot"と言うが、Mareyのカメラがライフルと同じ使い方をするようになっていた(だから日本では写真銃とよんでいる)ことを考えると、その対応がおもしろい。
もっと知りたい人のための資料
●
Wikipedia
Étienne-Jules Marey
(http://en.wikipedia.org/wiki/%C3%89tienne-Jules_Marey 06-06-08)
参照/引用させていただいた資料
●
Gillian Denton (project editor), et al
Eyewitness Guides
Cinema
(Dorling Kindersley Limited, 1992)
コンピュータ
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06-07-08