資料シート/[三月劇場]

なぜ個展をやるのか
個人的な確認書

http://www.infonet.co.jp/apt/March/fragm/exhibition.html




 一番の理由は作品がたまったから。でも、そんなに単純にはことはすんでいない。自問自答しながらもう少し深く突っ込んで考えてみよう。なお、個展とは言っても、グループでやるグループ展(特に二人だけでやる場合は二人展ということもある)や、映画やパフォーマンスを見せる上映会、公演会なんかも含めて、なるべく広く考えてみる。

○いろんな人に見せたい
 アトリエに招待するという方法だと、招待した人しか来てもらえない。誰でも興味を持ってくれた人には来てもらいたいというんだったら、メディアに広報とか広告を出して(これをどうやってやるのかという話しもそのうち)、公共の場所(つまりギャラリ、画廊とも言いますな)に置いてあるのを見てこらうのがいい。

○ちゃんと飾って見せたい
 "飾って"といっても、飾りたてて、という意味じゃない。作品を見てもらうのにふさわしい環境に置いて、という意味だ。
 環境でたいせつなのは、作品のほかのものを作品と切り離すということだ。極端な(でもないか。一般的かもしれない)場合は、作品以外のものをその場から排除する。たとえば、アトリエで見せるんだと、いろんな、作品そのものよりもっと刺激的なものが置いてあって、そっちの方が作品より立ってしまうことがある。だから、作品をちゃんと独立させて見せたいんだったら、そういう制作の場所から切り離して見せる。だいたい、観客としても、どこまでが作品でどれがそうでないかが分からなかったら見てて困るでしょうが。そういう会場もよく目にするけど。ついでに言うと、会場の隅に、作者があとで食べるらしい[セブンイレブン]で買ってきたおにぎりの袋が置いてあったりしたら何で会場を借りたのかわけが分からなくなるぞ。
 特にインスタレーションの形式だと、作品のほかの空間とは切り離された空間を支度して、そこを作品として構成しないといけない。そうするとアトリエではちょっと難しいかもしれない。

○見せたいものは見せたい
 もう一つの発表のしかたは、コンクールやアンデパンダンに出品すること。しかし、コンクールは審査があって、力不足ならだいたい発表させてくれない。

○じゃまされないで見せたい
 審査がなくて、申し込んだら必ず発表させてくれるのをアンデパンダン(英語の"インデペンデント"に当たるフランス語。だからインディーズだね)というけど、これならいいかと言うとそうでもない。コンクールにしてもアンデパンダンにしても、会場にはほかの作家の作品も飾られるわけで、中にはピカピカ光るのもあるだろうし、ギャアギャア音を立てるのもあるだろうし、まあそれは実際にはおたがいにセーブもするし世話人さんがちゃんとしてくれるけど、うるさいことを言えば、自分とはテーストの違う作品とぐっちゃぐちゃに一っ所で作品を見てほしくない人もいるかもしれない。たとえば、上映会だったら、地味だけど真剣な映画を作ったらその前にやったらに乗りがいいコメディを上映されちゃったら困るでしょ(もちろんこっちが加害者になるかもしれないが)。
 こっちがまだ非力なのにできのいいのと並べられるとこれがまたつらいしね。

 個展は自分でプロデュースしないといけないわけだから(作品を作る以外にどんな仕事が発生するかはあとで説明する)、かなり気合いが必要だ。何しろ、コンクールなら作家は搬入と搬出だけやればいいんだから(招待されるようになるとそれさえ向こうでやってくれることも)。かなり気合いが必要だ。

 それから、個展を開いたという実績は、業績書に書ける(その分野の就職でしか役に立たないかもしれないけど)。個展で作品を発表したというのは審査を受けないで開けるから、コンクールの展覧会に出してもらえたというのと比べると、あまり高く評価してもらえないかもしれない。もちろん、会場のギャラリの方が主催してくれるで開いた個展というのもあって、それは別。

 歴史的には(現在でも大家とよばれる方にとっては)、個展は新作展示即売会。偉い人の個展に行くと、作品の脇に"売約済"という札が張り出してあるのをよく目にする。だから、こういう考え方で個展を開くんなら、ほんとうは作家は会場に貼りついていて、見に来られたお客さんと商談できるようにしておかないといけない。
 今では、作家と観客との関係は、作品の売り買いで成り立つだけじゃないはずだ。でも、だからこそ、作家が展示の場に立ち合って、観客が作品と関係をもつところをきちんと見届けることはきっと必要だ。

90-04
井戸良弘



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