[左耳の精霊]
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不動院・山門


 山門に吊された巨大堤灯をはさんで話す二人。

常盤「...地震...7ヘルツ...周波数7型機...埋められた鐘」

水樹「イメージの連想ゲームって感じね」

常盤「そう、単なる連想ゲームかもしれない」

水樹「モザイクのパズルは、何か意味のある形になるの?」

常盤「と言うより、より複雑な別のパズルへと成長し始めてるみたいだ。パズルの作者自身が考えてもみなかったものにね」

水樹「パズルの作者?誰?」

常盤「キツネか、それとも鬼か...」

 山門の堤灯を背にした常盤にデジカメを向ける水樹。

水樹「オニ...ねぇ、例のオニヤマって人は?どうして常盤君にメールして来たの?ホントに心当たり無いの?」

 デジカメのフレームの中で動く常磐の映像。

常盤「どうも、あのメールはオレ宛てじゃなく、あのページに掲載してた石仏の記事に対してのものじゃないかと思うんだ。そして、あのページには水樹のポートレイトが掲載されてる」

水樹「つまり、あのメールはわたし宛てに出されたってこと?どうして?」

 フレーム内の常盤が、何か思いついたように水樹に迫って来る。

常盤「そのカメラ、まだ石仏の写真残ってる?」

水樹「え?えぇ。」

 フレームの中にデジカメを鷲づかみにする常盤の手のアップ。
 常盤、水樹からデジカメを奪い、石仏のデータを液晶で確認する。

常盤「妙な毛があったのは、この石仏の傍だった?」

水樹「うん」

常盤「左耳が欠けてるんだ」

 石仏のアップ。

水樹「そうね。あまり気にして無かった」

 常盤、水樹の左耳を見つめる。

常盤「(ひとりごと)水樹もパズルのひとつ?」

水樹「え?」

常盤「鬼の民話が、気になるな…(突然)水樹!」

 常盤、水樹にデジカメを投げ返す。水樹、とまどいながらキャッチ。

常盤「(水樹を指差し)民俗学の基本は?」

水樹「フィ、フィールドワーク?」

常盤「(にこっと微笑み)五百羅漢だ」



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98-09-10