作品記録/[三月劇場]

[いつか見た朝]
使わなかった脚本(一部)







 車が走って来るのが見える。征は立ち止まって合図を送る。バンが少し走り過ぎてから停まる。征は駆け寄ってドアを開ける。
 運転していたのははたち前ぐらいの少女。

少女  ...乗るんでしょ?

 征は乗り込む。車が出る。

 これ、きみの車?

少女  友だちの家のなの。引っ越しのアルバイト。その子の新しい家まで転がしてくとこなの。

 ふーん。

少女  人間と荷物はもう別の車で行っちゃってるの。

 ふーん。

 車は走っていく。

少女  どこ行くの?

 銚子まで行きたいんですが。

少女  何か用事なの?

 何ていうか...

少女  ややこしいの?

 知ってる奴が写真やってて、犬吠崎の写真があって、それ見せてもらったら、どうしても一度行ってみたくなって。

少女  ふーん。

 きのうの夕方過ぎに家を出て、それからずっと歩いてきたんです。

少女  ふーん。

 どこで下ろしてくれてもいいです。ほんとに。

少女  あたしこれから成田まで行くの。だから、佐原まででよかったら乗っけてってあげる。

 助かります。






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