化学物質過敏症−さまざまな症例


UpDate 1997.11.17    

化学物質過敏症の40人の症例集です。
ケナフ紙と大豆油インクを使用しています。

編者・発行者 (旧)化学物質過敏症ネットワーク


症例−1

34歳(女)・主婦

生まれたときからアレルギー体質と診断される。15歳からアトピー発症。
幼児より、脱力感、無気力、記憶力の低下、落ち着きのなさ、疼痛、頭痛など不定愁訴になやまされる。
24歳の時、かかっていたアレルギーの小児科の先生に、「化学物質過敏症」と診断される。
セロン・G・ランドルフ博士その他の本を参考にしながら、可能な範囲で、 食物、家庭内の化学物質を遠ざけていったところ、やや軽快する。

自覚症状(はっきりしているもの)

☆スポンジラバー.....イライラ、胸と喉のつまり、空気不足感、頭痛、匂いで吐き気、鬱症状

☆殺蛆剤(殺虫剤)..(他の家にて・くみ取り式トイレ)イライラ、やや錯乱様状態 涙 息苦しさ、疼痛 鬱症状

☆防虫剤(衣類).....他の家にて・閉鎖室内)イライラ、神経がかきみだされるような感じ、頭痛、疼痛、息苦しさ

☆農薬(名称不明)....手の震え、舌のしびれ、呂律がややあやしくなる、思考の不明瞭化、喉のつまり、 関節痛、鬱症状、眠気、頭痛
(市販のキャベツとブドウに特に強く反応する。無農薬がはっきりしているものには反応なし、植木の消毒剤)

☆化学雑巾(特にシリコン系)...触れたところに膜がはったような感じ、はげしいイライラ、軽い吐き気、頭痛

☆化粧ムース・化粧品・ガラスクリーナー・コンタクトレンズ(液)スティックノリ ......触れたところに膜がはったような感じ、激しいイライラ、気分のムラ、感情が高ぶる。 時々ひりひりするような痛み、思考の不明瞭化、 記憶力低下、眠気、喉のつまり、涙、匂いで吐き気。 ガラスクリーナーとガスストーブのミックスで、神経症状(遊離症状)

☆石油ストーブ・ガスストーブ(他の家にて 空気の流通が並の場合)
.........喉のつまり、思考の不明瞭化、記憶力のはげしい低下、あくび、はげしい眠気、息苦しさ、鬱症状

☆ベンジン、揮発系溶剤..頭痛、吐き気、息苦しさ、関節痛 めまい

☆排気ガス...........息苦しさ、軽い疼痛、頭痛、気分が重い、程度のさまざまな吐き気、イライラ

☆プラスチック・ビニール(新しい冷蔵庫、ビニールシートが特に) ........程度のさまざまな吐き気、空気不足感 頭痛、軽い鬱症状

☆香料...............程度のさまざまな吐き気と頭痛

体調、その他の要素によって左右されますが、自覚症状がはっきりあるものをあげてみました。
なお、最近では、生活に気をつけているせいか、軽いもの(ワープロその他のプラスチック製品、
思いきり換気扇をまわして使うガスグリル、など)はあまり気にならなくなりました。
やはりいくつかの要因が重なると反応がきついようです。


症例−2

T.Mちゃん(3歳/男性/大阪府)
 主な原因:シロアリ防除
   筆者:患者の母


アメリカでの治療

 私の息子は生後2カ月でアトピーと参断されました。あちこちの病院に行き、民間療法もいろいろ 試しましたが、息子のアトピーは良くなりませんでした。1歳8カ月でアレルギー用ミルクとごく限 られた食物でしか栄養をとることが出来ず、成長は遅れ、全身の皮膚状態もひどく、四六時中かゆ がっていました。
 一体どうすれば良くなるんだろう……と途方に暮れていた時、アメリカに中和法というアレルギー 治療をする病院があることを知り、化学物質過敏症という病気があることを知りました。また、そ の病院に行かれた方々から環境整備の大切さを教えてもらいましたが、その時は、化学物質がそれ ほど悪影響があるとは実感できずにいました。
 徹底的に管理した環境でアレルゲンを除去した、無機質なアメリカの病院とコンドミニアムに2カ月 滞在し、その間、皮内テストをして食事内容が変わったこと等もありますが、息子は除々に一人遊 びが出来るほど、機嫌の良い時間も持てるようになりました。と同時に、コインランドリーや、トイレ、デパート に入った時、合成洗剤や芳香剤、化粧品のにおい等で、息子が狂ったようにかゆがり出すという ことが、やっとはっきり分かりました。
 このように息子が化学物質に過敏に反応するようになった原因は、おそらく私が妊娠7カ月の時に、 家でシロアリ駆除(有機リン剤)をしたことにあると思います。医師は「今もその家に住んでいるこ とは良くない。引っ越しが最良だが、まず家の中をきれいにふき取ること、空気清浄機を使うこと」 と言いました。

 化学物質のにおいを避ける生活をするうち、鼻が敏感になり、さまざまなものをくさく感じるよ うになりました。生活は閉じこもりがちになり、自分たちが普通の社会からはみ出したように感じ、 何度も落ち込みました。
 私の母が家に来たとき、母は化粧を落として息子と数時間遊んで帰りましたが、息子は1時間ほど 異常にかゆがりました。母からは石鹸の香料とクリーニングのにおいがしていたので、そう言うと 「遊んで興奮したからかゆくなったのよ」と言われました。確かに化学物質以外の原因でかゆくな ることもあるとは思いますが、反対に、反応に気付かず見逃していることも多いように思います。


慎重に家を建てる

 私たちは国道沿いに住んでいて排気ガスが多く、シロアリ駆除剤の残る家にいては良くならないの ではと思い、少し田舎に引っ越しをしました。自然住宅アドバイザーの方に相談し、建て売り住宅 ながら、工務店にいろいろお願いして安全な家を建ててもらいました。息子は木等にもアレルギー があるので不安はあったのですが、引っ越してみると想像以上に木(床の杉板)のにおいがきつく感 じました。
 引っ越してすぐ再度アメリカの病院へ行ったのですが、医師のアドバイスで結局、リビングの床 をアルミとステンレスで覆ってしまい、しばらくはそこで寝起きしました。今の息子にはやはり自 然住宅も無理だった、と悲しくなりましたが、1年たった今はにおいもほぼ抜け、問題なく暮らせて います。
 病院では細胞の検査をしましたが、免疫が低下している状態でした。医師は「息子さんの体内に は化学物質の毒がたまっているが、解毒により自然に免疫は上がる」と言いました。
 アメリカで治療されている患者の方からサウナの効果を聞き、病院内のサウナを試しました。サ プリメントをとりながら、サウナ、マッサージを数日してみると、最初出にくかった汗が次第に出 るようになり、息子は元気になりました。このことはうれしい収穫でした。今も汗をかく、運動す るよう気を付けています。

 息子はもうすぐ4歳。まだまだ湿疹があり、多くのアレルギーがありますが、以前に比べると過敏 さがずいぶんやわらぎました。あれほど激しい反応があったのに、今は、気を付けながらですが、 いろいろな所に行けるようになったのはうそのようです。
 ただ、来年は幼稚園です。さまざまな化学物質にさらされたら、息子の症状はどうなるのだろう と不安でたまりません。皆様のお話を参考に、周りの人々に分かってもらえるよう努力したいと思 います。


症例−3

 TYさん(女性/京都府)     主な原因:絵の具、建築資材
          筆者:患者本人(一部患者の夫)

既往症

  16歳から 不眠。服薬=レンドルミン1.5錠を就寝前。
 19〜20歳 肺結核。
 30〜44歳 ぜんそく。転宅で自然治癒。
 48歳から 再生不良性貧血。今も最低線。
 48歳から 攣縮性狭心症。服藁=フランドル・ヘルべッサー・フランドルテープ。
 48歳から 胃弱。服薬=セルベックス・ガスター。
 49歳から 緑内障。服薬=ミケラン1日2回点眼(副腎皮質ホルモンによる)。
 71歳     第4腰維圧迫骨折。不眠を起こすので服薬・貼薬なし。
 75歳     第5腰稚圧迫骨折。同上。

発症の経緯

 画材屋の勧めたアクリル系合成樹胎を。建築用塗料と知らず、油絵の下塗りに使っていた。
  7年前から使っていて、塗るとき咽喉が痛くなったが、アクリル絵の具も同じなので気にしていなかった。
 ところが1995年6月に下塗り中、頭痛、激しい疲労感で発熱し、その後、下記のように次々と新し
  いものに反応するようになった。

 95年6月〜
 建築用塗料→アクリル絵の具一油絵の具→水彩絵の具(徹量の防腐剤を含む→
  テンぺラ絵用瀬料(ホルマリン含有)→膠(にかわ)→画廊・美術館・油絵・水彩画→防虫剤・芳香剤

 95年9月〜
 住宅展示場→新築の家すべて→新しい家具・畳・襖→新築街(全戸入居していて2年ぐらい)
   →歯科医→荒物屋→衣料品売場・家電売り場→抗菌加工布団・枕

発症の経緯(詳細)

1995年
 6月
  10日 アクリル系合成樹脂でキヤンバスの下塗り。100号3、80号1、5O号2、他、塗りを3度繰り返し中、頭痛。
  11日 キャンバス5枚、水をつけてヤスリで磨く。頭痛、めまいで起きていられず、夕方寝る。
  12日 2度塗りを3度くり返し、午後激しい疲労感。37.5度発熱。徹熱は9月まで続く。
  13日 受診。前年末から度々風郊をひいたことを告げると、血沈検査・血液検査。アトリエは刺激すさまじく、2度目の磨き不能.どうして刺激があるのか分からない。
  17日 再診。赤沈78〜127。「免疫機能に疑いあり」と。尿・血液検査。抗生剤をもらう。
 26日 抗生剤切れ、疲労甚だし。
 27日 受診。免疫グロプリンM1200。「検査入院の要あり」と(血液の病気の疑い)。
 29日 防毒マスクをしてアクリル絵の具でキャンバス下ごしらえ。80、100号、2枚。
 30日 キャンバス下ごしらえ。100、50、2枚。小品5枚。防毒マスク着用。
 7月
   2日 全身激しい疲労感。
  4日 創元会(油絵)を見に、市立芙術館。反応なし。府立芸舘(水彩)。雨の中タクシーで。
        疲労激しい。
  6日 委員会で東京へ。JR冷房寒く、ホテルヘ着くなり夕食せず、寝てしまう。
  10日 検査入院.心電図、肺レントゲン、肺活量、心エコー、骨髄穿刺、眼底検査。「年齢相応
        の白内障あり。左眼視神経侵されている。右眼縦じわが見える。増えるなら手術の要あり」。低脹
        圧性緑内障で、3年前から通院していた。筋力検査、腹部エコー、RI。
  15日 所見「IGMが多いと血液が粘くなり、梗塞の恐れがあるから半年に1度、受診せよ」。
 20日 ラジオアイソトープ、全身骨。上腹部、CT。
 29日 受診。油絵を禁じられる。絶望して血液検査を忘れて帰る。胃痛。下痢。
 30日 午前4時から下痢数度。食欲全くなし。昨夜からカボチャ1切れのみ。水彩絵の具は昨年末か
        ら頭が痛くなって使えなかった。風部ばかりひき、春の花粉症も激しかった。既におかしかったのだ
        ろうか。数年前から就眠前、いつも咳が出て、龍角散をなめていたのを思い出す。
 8月
   1日 テンぺラ絵に転向するほかないと、技法書を京都へ探しにゆく。車の後座席に寝て。発熱38度。のぽせ。疲労。
  4日 老舗のオランダ画房へテンぺラ画顔料を買いに行く。疲れ激しく、38.5度。
  7日 テンぺラ顔料は、ホルマリン臭強く、とても使えない。木炭の中ヘビンごと入れて刺激を消
       そうとしたが、1カ月かかっても消えず、人にあげてしまう。
  10日 内科受診。「原因不明、治療法なし」と。絶望。38度。
  11日 朝方、数度嘔吐。胃痛。下痢。
  17日 秋季展作品20号、有機溶剤対応マスクで描く。マスクは20分しかもたない。
  18日 腰痛激しく、鍼を試みる。10月まで月数回続け、一応治まる。
 21日 明日からの京都展の展示準備のため、府文化芸術会舘へ。ガスマスク着用。展示終了後、
        地下の食堂で会食しながら打ち合わせ。息がつけない反応はこの場所で初めて。
 24日 会の代表が来るので、ガスマスクなしで会場へ。喉、気管支、肺の痛み、のぽせ、フラフラ。
        京都駅へ送って早々に帰宅。38.3度。
 9月
  14日 和服の虫干しをして、ひどくのぽせ、反応する。防虫剤を全部捨てる。
 22日 知人の写真展に行く。会場に絵はないが、染み込んでいて反応する。帰り、ホルマリンなし
        のテンぺラ顔料を入手し、心が落ち着く。
 10月
   3日 前病院の紹介状を持って京大医学部付属病院へ行く。血沈と免疫のある第二内科を受診。
        前病院は要諦がなければ検査資料は出せないと言うので、請求してくれるよう頼んだが「角が立つ
        から」と言って、前病院と同じ検査を3カ月かかって終え、「IGEが少ないので免疫病ではない。原
        因不明、治療法なし」が結論だった。免疫のバッチテストについては後述。
  6日 アトリエの有機溶剤の汚染が、隣室や2階に及んできたので、友人所有の空き家へ額装小品
        以外の作品を全部頑ける。
  9日 来年S月予定の個展をする自信がなくなったので、府立文化博物館へせっかく取った予約を
        取り消しに行く。無念。帰りに和紙屋をのぞく。いろいろな色をそろえており、これでコラージュ
        も面白いなと、少し買って帰る。
  12日 テンペラ下地に膠を煮て、塗る。乾き始めると、頭がクラクラする。
  13日 膠と胡粉を合わせて下塗り。あまりめまいと頭痛が激しいので、門の鉄柵の外側に縛り付
        けて塗る。1∝I号2枚縛り付け、1カ月たってもクラクラが残り、仕方なくテンぺラ顔料を乗せ始めた
        ら、少しましになった。門の近くは1年半たった今でも、クラクラするのはなぜだろう。
 22日 主人が門をぞうきんでふいてくれたが、そのぞうきんをすすいだ水を流したら、戸外の流
        し、家内の台所、洗面所、洗濯機の排水口から一斉に上がってきて、クラクラする。
 11月
  22日 京大皮膚科の先生は親切だった。バッチテストの結果、次の病院を紹介してくださった。
        ぺトロール、テレビンだけ強陽性.以下、陰性。油絵の具、水彩絵の具、リクイン、ショーフレッ
        クス(発症の誘因となった建築塗料)、アクリル絵の具(最初から咽喉痛)、サンシックッド・リンシー
        ド、古いキャンバス(ショーフレックス+アクリル絵の具+油絵の具で描いたもの)。
         ショーフレックス、アクリル絵の具、水彩絵の具、膠が、どうして陽性でないのか分からない。
       「皮膚に付けるのと吸うのとは違うのだそうだが、上気道や肺は空気と接触するのだから似ているの
        ではないですか」と言うと、「そういう説もある」ということだった。
       よく考えると、ショーフレックスとアクリル絵の具を使い出して7年になるが、そのころから毎晩
        就眠前、咳が出、龍角散をなめて治めていた。油絵の具だけの時は、ながく副作用はなかった。
 29日 京大の皮膚科から産業病などに取り組む病院を紹介してもらう。そこへは9カ月通ったが、
        改築が姑まって、建材に反応が激しくなり、行けなくなった。検査だけで治療なし。
       NCV神経筋、MM、Cr、再びMM、ABR。血波検査、何回も。IGEは特に異常なし。IGM1200〜16∝)。
        血球は赤血球が常に330前後。絵の会を1年休会にするため、診断書を求めたら「自律神経失調症」ということであった.

1996年
 1月
  28日 本展出品のための下見会。入選が危ないと思われるのを少し直したりしたが、油絵の具にあまり
       抵抗がなかった。普段、油絵の具を使っていない場所だったからだと思う。石油ストープに困った。
 2月
   8日 下見会に力を得て、名古屋までロスコ展を見にゆく.1960年の抽象で古い作品だが、館
        自体にしみ込んだ絵の具で、喉、気管支が痛く、クラクラする.京都の美術館も同じ。
 3月
   7日 上京。上野美術館へ。8、9日、地下で審査.S、6枚ずつ繰り出してくるので、なんとか
        辛抱できる。犯分ごとに外へ出て空気を吸う。いったん帰宅。一斉に表を向けて天井まで上下2投にす
        き間なく並べた作品が吐き出す有機溶剤のすごさ。10分も居られず外に飛び出す。外は寒く、出たり
        入ったり。例年、どうして何ともなかったのか分からない。
  14日 オープン。弊行苦行の一日。帰りのJRで、にわか仕込みのテンペラ画の情けなさに涙止まらず。
        反応の激しさと思い合わせ、しばらく休会を決意する。
 30日 フレスコ画はどうかと武藤僻九を見に行く。油よりすごい反応。
 6月
       ・心臓発作頻発.心エコー、Jb電図、肺レントゲン、今までと同じ。
       ・痔。大腸検査異常なし。内痔大きく4個。内服薬、 座薬で7月に治癒。
       ・腰痛、年に2、3回数日痛むことはあったが、こんなにしつこいのは初めて。
       ・うつ状態。
 7月
   4日 古いコルセットで上胸部に直径2cmの青いビラミツド様の血腫が出来る。触れると痛い。
  8日 循環器受診の折、心臓血管外科へ行くように言われる。5日日だったので、隆起は俄くなり、
        青い皮下出血が広がっていた。深部の皮下出血で、押さえるとかなり痛い。「IGMが多いので梗塞を
        起こし、血管が破れたのか」ときくと、「心配ないでしょう」とのこと。
 10日 外科へ。「ガンではない」とのこと。青色はだんだん広がって、てのひら大になって、褐色に変わっていった。
        痛みを感じなくなるのに、40日ほどかかった。
 18日 腰痛激しく、整形外科受診。「3年前の第4腰椎圧迫骨折時のレントゲン写真と変わりはない」と。
        鎮痛剤は服草、貼布とも不睨が強くなるので断って帰る。
 7月末 微熱が続く。音楽の美しさに感動、涙が出る。途端に「自分はもう実しいものが表現でき
        なくなった」との思いに変わり、涙止まらず。
 8月
  17日 腰痛激しく鍼を試みる。10月まで続け、だいたい治る。
 9月
  24日 歯科医へ。中の空気の刺激が甚だしく、外へ出て待つが、排気ガスでいたたまれない。
        定期検診を辞退する。こんな事は初めてである。

悪化の経緯

   96年9月、家から25mほど敗れた所で家の新築が始まり、合板などの建築資材が現場に運び込まれ
  たために症状が悪化した。それ以前は、画材が反応物質の中心だったので、避けようとすれば接触
  せずに済んだ。ところが、それ以降は、避けようにも避けられず、受容するしかなかった。そのた
  め、反応物質は多岐に渡り、症状は一気に激しくなった。
 新築工事では、特に、外壁や物干し、ベランダなどに「キシラデコール」(武田薬品)という塗料
  が塗られると、もっとも強い刺激があった。武田薬品に問い合わせると「防虫、防カピが主目的で、
  石油系の溶剤(溶剤名は公開していない)に効能がある薬を溶かしてある。塗装後4日一1週間もすれ
  ば乾燥する。その後の悪臭や刺激はほとんどないと言われているが、個人差があるので、
  あるいは4、5カ月続くかもしれないが、今まで苦情はない。塗装時の取扱者には、頭痛、呼吸困難、
  フラフラすることがあるので、注意書きで警告しているが、いずれも一過性のもので、病に至ること
  はない」とのこと。弱者に配慮した答は聞けなかった。
   また、その家の玄関のアプローチに使われた、JRの枕木の廃材からも強烈な刺激があった。JRに
  問い合わせたところ、防腐などのためにクレオソートを使っているそうだ。
 国立公衆待生院に問い合わせたところ、「枕木に使う防腐剤はクレオソートで、強い消毒剤と一緒だ。
  古い枕木を切る時に、有毒物質が溶出、飛散する恐れがあるので、使う場合には全面を油性塗料で
  コーティングして飛散を防ぐなどが必要。しかし、油性塗料に障害が出る人には適当ではない。
  枕木は普通は住宅建築に使わない。最近も、関西の小学校の校長先生から『枕木が安いので学校の
  砂場に使っても良いか』と問い合わせがあったが、『だめです』と答えた」とのことだった。
  近くで新築が始まってからの反応物質は、
 
96年9月〜
 排気ガス(車・石油ストープ)→新しい新聞・広告→マジックペン→墨・墨書・ボールペン→
 新改築中の建物・病院・ホテル・劇場・百貨店・スーパー・公共の建物→車両(バス・電車・タクシー)
 →ファックス(機器・操作・コピー)・抗菌剤の入ったもの(スポンジたわし・ザル・コルセット)
 →印刷物・郵便物・アルコール・消毒・傷薬


 その家と交渉の結果、枕木によるアプローチを替えることで、双方合意に至り、3月に見積も出た。
  ところが、4月に新しい材料としてアートカラーレンガを業者が持参、水で洗ってテラスで一晩乾か
  しておいたところ、強烈な刺激を発し、38度の熱が出て、他のいろいろな物質にも反応すると熱を
  出すようになった。
 公衆衛生院におききしたところ、「低温で焼いたアートカラーレンガは素材をいろいろと固着材
  で固めてあるので、その材質が強い反応を起こす場合があり、非常な高温処理の物でないとだめで
  はなかろうか。やり直すにも十分な吟味が必要だ。」とのご意見を頂いた。

悪化の経緯(詳細)

1996年
9月26日 向かい側25mほど隔てた空き地に、家の建築が始まり、反応激しく、家にいられない。
  28日  向かいの新築の刺激が強く、昼間だけでも家を離れようと、アパートを探す。不動産屋で
         聞くと、2軒見せてくれたが、一つは排気ガスが多く、建具に反応があってやめる。築後30年という
         のも畳を替えてあって、クラクラする。疲れて、古いコーヒー店で休むが、古びたテーブルにクラ
         クラする。ワックスを塗り直したのかと思う。バス停のベンチで主人と2人、考え込む。
         結局、私だけ、伏見の娘の家へ泊まりに行く。
  29日 荷物を運び、しばらく移り住むことにする。
 10月
  10日  アトリエ改装の打ち合わせのため帰宅。大工さんの衣服にすごい反応。無垢材を釘で
        打ち付けることに決定。向かいの新築も、外囲いで一気に反応が激しくなる。
        クラクラする。息苦しさ。
  15日  雨で湿気が多いと、娘の家も排気ガス、室内の家具に反応する。うつ状態.胃痛。心臓発作。
11月
  18日 「材木が乾燥したので、25日着工」と知らせてきて、重い腰をあげる。ちょうど、京阪支部
        小品展開催中なので、支部長を通じて、アトリエにある物を何でも、欲しい物を持って行っ
        てもらうように頼む。
 24日 巻きキャンバス地、木枠、絵の具、美術全集3種を含むすべての美術書、本棚、机、ヘルメス石膏像、
        オーディオセット、テレビ、応接セット、すべて処分。記録類と50号キャンバス2枚だけ残す。
 25日 アトリエ取り壊し。じゆうたん、壁紙、ベニヤ、石膏ボード、断熱材、天井も壁も床も、
        すべて玄関から出さず、アトリエの北窓の鉄柵をはずして出してくれて助かった。すごい刺激。
 26日 床にする節だらけの桧板を搬入。強いにおいだが、いいにおいだと思う。反応はない。
        壁の杉板、天井のトガ、すべてにおうが、森に入ったような快さ。
12月
   3日 昨日、階段からすべり落ち、腰を打ったので、整形外科へ。「第5腰椎圧迫骨折」と。
        アトリエ工事終わる。柵付指示などで、安静とれず。腰痛。
 10日 姑の17回忌や、アトリエヘ残した物を搬入するなど、安静とれず。少し親した物は、思い
        のほか反応激しく、押し入れに家に残っていた木炭を入れる。
  13日  木炭はよく吸うが、吸った木炭は刺激強く、捨て、備長炭と入れ替える。
 20日  コルセットが出来たが、装着すると息苦しくなり、数回繰り返して「抗菌処理ずみ」とい
        う文字に気が付いた。
 25日  12月に入って、向かいの建築の反応がひどくなった。杉板にキシラデコールというドイツ
        製の塗料を塗ったそうだ.家の北側鹿下、台所、風呂、トイレなど、ひどく反応する。
 28日  向かいの建築、ガレージ・玄関アプローチの両脇に、枕木の廃材を敷きつめ、すごい反応
        がわが家に及ぶ。2階もクラクラする。年賀状を書く。ボールペンを使ったが、しばらくすると、
        頭痛がして、吐きそうになる。
1997年
 1月
  1日 年賀状がドッサリ入る。クラクラして頭痛、のぽせで急ぎ片付ける。墨もいけない。
 5日 年末で完成したはずの向かいの新築が、よけいに反応が強くなってきた。知人の空き家にし
       ているマンションを貸す、というので見に行く。数年使っていないというが、和室が強い反応。
       昨年京都新聞に掲載してあった上原裕之氏の記事を知り、娘婿がファックスで通信してくれる。
       すぐに電話あり。夜遅く、道本みどりさんからも。
 6日 道本さんにいろいろ教わる。「化学物質過敏症ネットワークに入らないか」と。
 9日 空気清浄器を導入するが、反応が強く、結局有機溶剤とホルムアルデヒド対応の面を無くし、
       活性炭だけにする。それでも反応があるが、汚染のひどい時は威力を発揮する。
 10日 ファックスを導入したが、機器、操作、通信文とも激しく反応し、5日間で音をあげ、人にあげる。
 11日 ファックスの通信文、すべてビニール袋に入れ、缶に入れるが、反応強く、向かい側新築からの
       刺激もあって、一日中クラクラとのほせ、頭痛がする。新聞や印劇物もつらくなり、パニック状態に陥る。
       反応が強いと、記憶が寸断して無くなり、1分で出来ることが、何をしているのか分からなくなり、
       ウロウロして30分もかかる。痴呆症になったのかと思う。
 13日 防風林のつもりで親しておいた北側塀ぞいの高い生け垣を刈らせた。植木屋も「木の上に
       登るとタラクラし、咽喉が痛い」と言って、しきりに咳をし、少しずつ下に落としたのを処分して
       は刈るので、一日かかった。刈ったらたちまち家中がクラクラしはじめ、寝室にも及び、居る場所
       がなくなる。空気清浄機も反応する。転居を考え、あちこち電話して、探す。
 21日 4週間ごとの循環器受診日。病院改築の刺激で行けず、薬だけもらってきてもらうが、
       薬袋にクラクラする。
 23日  米屋が米を置いて出ていくのと同時に、急に咳が止まらず、強い刺激で肺がキューツと痛んだ。
       ついで心臓が苦しく、立っておられなくなった。後で電話すると、「冬は灯油も一緒に商うの
       で、石油が少し手についていたせいでしょう」ということだった。
      心臓発作様の苦しさは40分ほど続く。攣縮性狭心症の場合は、息苦しさでものも言えなくなり、
       脈拍がかすかになったり途切れたりするが、近ごろ何かに反応し、苦しくなる時は、呼吸が荒くな
       り、脈拍は不規則だが強くなる。いつもと違った苦しさになる。

症状

  @発熱(37〜39℃)強い疲労感
  Aふらつき くちびる、舌、喉、気管支、肺の痛み
  B関節痛みや腫れ(右ひざ)筋肉痛、こり(右側の胸、肩甲骨のあたり、肩、腕、手首、親指の付け根)
  C日のかすみ、視野の上方がサッと暗くなる
  D心不全、動悸
  E呼吸困難、ヒューヒューという呼吸音
  F残留農薬の多い野菜、添加物の多い食物で、胃、腸の灼熱感 痙攣様のこわばり 体中の揺れ感
  G皮膚の発疹


 初期3カ月と現在@  半年前からB
 軽い反応はAC  強い反応はACDE
 外出によってGが付随する
 夕食後はACDEにFが付随しやすい


対応

  ・アトリエに置いていた作品を全部預けて(額装小品を除く)、椅子セット、書籍、本棚、オーディ
   オ、CD、テレビ、絵の具類を全部処分。
  ・アトリエ内装替え。床・天井・壁に無垢材を釘で貼る。テンペラ絵の具、テンぺラキャンバス、
   記録類を残したが、反応が残る。
  ・ある会社の空気清浄機が排気ガスによく対応する。近くの物が静電気を帯びるのが欠点。別の
   会社のものも導入したが、有機溶剤、ホルムアルデヒド対応のフィルターには反応があるので、
   活性炭面だけで試用中。
  ・備長炭を小分けにして部屋、押入に入れる。有害物質をよく吸うが、吸った後の処理が問題。
   新しい炭は木酢が徹量残り刺激がある。

   病院は消毒がされていて行けないので、薬として、
  ・マキシパック(天然ビタミン・ミネラル)。4年ぐらい前から。
  ・刺五加(エゾウコギ)。中国産。免疫力を増し活性酸素を除くというので服用。
   活力が増し風部をひかなくなった。赤血球が増え睡眠が5、6時間とれるようになった。1年前から。
  ・クロレラ。刺五加と相乗効果があるように思われる。1年3カ月前から。
  ・陀羅尼助丸。


その他

 絵の描けなくなった絶望感と、この4カ月余、近所の新築で一時娘の家に避難するなど受け身の対
  応に追われ、生きる希望を失っていました。自分がMCSではないかとは新聞や雑誌からの自己診断
  で、この病気を診断できない医療機関の無力さを痛感しました。無制限に抗菌・抗カビ・防虫剤を
  多用する業界を放置した行政や学会、無批判に一斉行動に走る国民性が問題でしょう。



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