インタネットサービスプロバイダからのサービスを受けて
インタネットを利用する場合や、自宅から会社の
ネットワークを使う場合のための手段の一つに、ダイヤルアップ接続がある。これは、電話をかけることによって、手元のコンピュータを一時的に離れた場所にある
ネットワークにつなぐというものだ。
ダイヤルアップ接続を実現するためには(通信を実現するにはいつでもそうだけど)、コンピュータ側でするべきことと、
ネットワーク側でするべきこととを申し合わせた規約が必要になる。PPPはそんな規約の一つで、この目的のためには、たぶん世界で最もよく使われている(しかもダイヤルアップ以外でも使える)。PPPは、会社の
ネットワークのルータをほかの会社のルータに接続する場合などにも使われている。
PPPは次のような状況を想定して決められている。
・二つのノードの間をつなぐ
・使う時だけつないで、使わない時は切ってしまってもいい
・回線としては家庭用の電話、ISDN、デジタル専用線などを用いる
・シリアル方式(モデムやTAを用いる)
・WAN規模の距離で使う
PPPにはいろいろな機能に対応できる多くの部分プロトコルが含まれている。
認証機能を使えば、つなぐことが認められている場合にしかつながせないようにすることが可能になる。PPPでは、認証はパスワードの応答に基づいて行なわれるようになっていて、PAPやCHAPが提供されている。
圧縮機能を使うと、通信の負担を減らすことが可能になる。送り出す側でビットの個数をできるだけ減らしておき、それを受け取る側でもとに戻すことができる。この処理は、回線に通す情報のくせをうまく使って行なわれる。SLIPではこの機能は外付けになっていた。
直上のOSI第3層(
ネットワーク層)にはIPやAppleTalkなどのプロトコルがあり、それらはもとの情報にいろんな情報を付加している。PPPはNCP(Network Control Protocol)という部分プロトコルを使って、これらもきちんと通信できるようになっている。
PPPとほとんど全く同じ機能を備えたプロトコルとしては、ほかに
SLIP(serial-line IP、スリップ)があった。しかし、ほんの少し遅れて登場したPPPの方が機能については豊富(TCP/IP以外にも対応など)だったので、90年代に、
MacOSや
Windowsが標準でPPPの機能を提供するようになってからは、(少なくともダイヤルアップに関しては)PPPだけがもっぱら使われている。
PPPとSLIPとは互換性がない。つまり、つなごうとしている二つのノードの一方がPPPなのにもう片方がSLIPというわけにはいかない。
80年代までは、遠くのコンピュータを呼び出して使ったり、BBSや
電子メールのサービスを利用するために、モデム(やTA)にターミナルと呼ばれる
モニタ(またはプリンタ)とキーボードだけの装置をつないで使っていた。
この時期にも
インタネットは使われていたが、イーサネット(上の条件では全く無理)などのLANぐらいでしかTCP/IPは使えなかった。それどころか、
インタネットにつながっている
ネットワークの中でも、モデムで通信するとなると、telnet(よそのコンピュータを呼び出してちょっと使わせてもらう)かUUCP(ニューズや定期便型のメール)ぐらいの用途でしか使えなかった。
(SLIPや)PPPが登場して、ダイヤルアップでモデムでを使うような状況でも、ようやくTCP/IPが利用できるようになった。これを受ける形で、プロバイダ(IIJ:92年〜など)による
インタネット接続サービスが始まった。
もっとも、ダイヤルアップでつないだからと言って何かのサービスをしてくれるノードがあったわけでもなく、すぐには何の変化も現れなかった。ところが、ちょうど同じ時期(89年)にBerner-Leeが
ウェブのアイデアを発表したことから、それに応える形で世界のあちこちにサイトが現れ、それが人々の
インタネットへの興味をかき立てた。こうして、現在のように誰もが
インタネットを利用する時代が始まった。
PPPが決められたころは、回線として想定されていたのはISDNや家庭用の電話ぐらいのものだった。しかし、最近ではADSLのような常時接続型の回線が家庭でも使われている。PPPもこのような環境に対応しなければならなくなっている。その一つの試みに、PPPを強化した
PPPoE(PPP over Ethernet)がある。