資料シート●各科目

ハッチング

http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/bookshelf/hatching.html




 線描画では、暗い面や地紋の見える面を表現するために、ハッチングといって、面を表わす領域の全体に同じ一定の方向の斜線を埋めることがあります。



[Two Doors]
(Winkenbach, 94より)

 これを鉛筆で描いてみましょう。
 左上から右下に向かうハッチングを描くとすると、鉛筆なら、

0. 鉛筆を左上に持って来る
1. 先を紙に下ろす
2. そのまま鉛筆を(2〜3cmぐらい?)右下に持って来る
3. 先を紙から上げる

を何度も繰り返すでしょう。

 タブレット(▽図)でも、これと同じことをすればハッチングができます。



 しかし、マウス(▽図)では、これと同じことをしてもハッチングにはなりません。どうなるかというと、左上から右下に向かって1本の長〜い直線が描けてしまいます。



 なぜこんなことになるかというと、タブレット(や紙)は、スタイラス(や鉛筆)が、(仮想的な)紙のどこにあるかを読み取れるのに対して、マウスは、それがどのくらい動かされたかしか読み取っていないからです。しかも、机に下りている間だけね。だから、3から0に戻るところの行程は、マウスにとっては"なかったこと"=左上には戻っていない=さっきの終点からさらに描き足す、ということになってしまうわけです。

 こんなふうに、タブレットは鉛筆と同じ操作によって同じ効果が得られますが、マウスは鉛筆と同じ操作をしても同じ効果が得られません。ここではハッチングを例にとって説明しましたが、ほかの描法でも同じようなくい違いが起りそうだってことは、もう想像がつくでしょう。
 このほかにも、マウスでは、鉛筆で描くのと同じ操作をしても、同じ効果が再現できない場合があります。タブレットは、それに比べると鉛筆とよく似ています。したがって、線描画をしたいんならマウスよりもタブレットの方が向いています。

 もちろん、上の0〜3の操作とはちょっと違う操作(どうすればいいか考えてみなさい)をすれば、マウスだって線描画と同じ結果を作ることは可能です。でも、それって、釣りに行きたいって言ったら、じゃあ魚屋さんに買い物に行ったらいいじゃないって言われるのと同じですね。
 結果が欲しいわけじゃなくて、0〜3(または釣り)っていう操作がやりたいわけですから。

 ただね、誤解しないでください。マウスはマウスとして使うためにこうできていて、タブレットはタブレットとして使うためにこうできているだけです。マウスだって、タブレットとして使いたいって人がいれば、そういうふうに作ることもできるんです。
 実際、建築や車の設計に使うタブレット(代わりにデジタイザと言うことが多いかも)では、スタイラスなんか使いません。代わりにマウスによく似た器具(真ん中が窓になっていて、中心が原稿のどこを指しているか分かるようになっている)を使います。
 逆に、最近のタブレットは、マウスみたいに、スタイラスが離れている間の移動は無視するモードと、ふつうの(タブレットらしい)モードとを切り替えて使えるようになっています。

 そもそも、タブレットの方がマウスよりも鉛筆に似ているのは、形が似ているからではありません。機能がそう決められているからなんです。形の方は、逆に、それに合せて作られているだけのことです。




引用させていただいた資料

Georges Winkenbach, David H. Salesin
"Computer-Generated Pen-and-Ink Illustration"
SIGGRAPH 94, Orlando, Florida, July 24-29, 1994


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美術/デザイン


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