CRTは、4角錐の大きなガラスの玉で、その奥(尖っている方)には、3本の
電子銃とそれを左右および上下から挟む電磁石が取りつけられている。また、手前の面には蛍光体が塗ってある(▽図)。
電子銃(銃とはいっても力が弱いので武器にはならない)は電子を連続して撃ち続けられるようになっている。撃ち出された電子は手前のガラスの壁に当たってそこで止まる。この連続した電子の流れを
電子ビームという。ガラスの玉は中の空気を抜いて真空にしてあるので、電子が空気の分子などに当たって途中で止められたりすることはない。
ふつうに撃っていれば、電子ビームはまっすぐ流れて手前のガラスの壁の中央に当たる。しかし、電子ビームは磁界によって流れを曲げることができる。左右に流れる磁界は電子ビームを上下に曲げ、上下の磁界は左右に曲げる。電子銃の左右と上下には、銃口を挟むように4個の電磁石が置かれていて、電子ビームの向きを高速に変化させることができる。したがって、左から右へ、さらにそれを上から下へ、という順に銃口を振りながら連射することによって、底面の全体に洩れなく電子を当てることができる(▽図)。電子ビームの向きの変化はとても速く、(
NTSC方式では)左右に1万5000回/秒、上下は60回/秒で振動する。
実際には、電子銃と正面のガラスの壁との間には、無数の穴が開けられた金網が張ってある。だから、電子は穴を通った先にしか進めない。電子銃は3本あるが、それらは、正3角形ができるように捻って、正面からそれぞれ微妙に向きがずらしてある。だから、同じ穴を通っても、底面に当たる点はそれとは反対の向きにずれる。こうして、それぞれの電子銃から撃ち出された電子は、金網の穴と同じ配列だけれど、互い違いの正3角形の順にずれて、全体として底面を埋めるようになっている(▽図)。
底面のどこにどの電子銃からの電子が当たるかは、場所によってきちんと決まってしまう。そこで、そのそれぞれの場所に対応するように、3種類の蛍光体を塗っておく。これらの蛍光体は、電子が当たるとそれぞれ赤/緑/青の色で光る(▽図)。
蛍光体は当たる電子が濃いほど明るく光る。電子銃は撃ち出す電子の濃さをすばやく変化させることもできる。この変化を向きの変化とをうまく組み合わせると、場所によって光りの明るさを変えることができる。
以上の仕掛けによって、電子銃に、正確に銃口を振らせながら、赤/緑/青のそれぞれの銃からの電子の濃さを変えていけば、加法
混色によって、手前の面に光る絵をカラーで浮かび上がらせることができる。