寄稿●三月劇場
アトムの時代
質問:回答
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http://www.infonet.co.jp/apt/March/paper/AtomicAge/QandA.html
Q:
TVのアニメーションのオープニングに使われている曲は、合唱団が歌っているのが多いみたいですが、何か理由があるんでしょうか?
(さ◇◇さん)
A:
今のTVのアニメーションでは、オープニングの曲を合唱団が歌うことはほとんどありません。
でも、きょう見てもらった[鉄腕アトム]時代のアニメーションはどれも、合唱団がオープニングを歌っているよね(実は一つだけ違うのがあるんだけど)。さ◇◇さんはよく気がつきましたね!!!
[鉄腕アトム]時代のアニメーションの視聴者として想定されていたのは、小学生より下の年齢の子どもたちです。だから、オープニングをおとなが歌ったりしていたら、番組の出だしからちょっと引いちゃうよね。オープニングは同じぐらいの年齢の子どもが歌ってくれた方が馴染みやすかったんです。子どもが歌う歌だと、声の高さが同じだから自分で歌うこともできるしね。でも、子どもで一人でオープニングみたいな大切な曲を歌えるような実力のある歌手はなかなかいません。だから、児童合唱団に歌ってもらうことになってしまったんじゃないでしょうか。
この仮説の脇固めになるのは、[エイトマン]です。このシリーズだけは、当時としては珍しく、視聴者としてもっと上の年齢の人たちを想定していました。だから(だと思うんですが)、オープニングは克見しげるというおとなの歌手の人に歌わせています。同じように、ずっとあとの時代に作られた[ルパン三世]や[宇宙戦艦ヤマト]でも、おとなの歌手がオープニングを歌っています。
今では、(アニメーションに限らず)TVのシリーズのオープニングの曲は、独立したポップスとして売れるように、青年より上の年齢のおとなのミュージシャンが歌うのがふつうです。
私が考えた仮説はこんなのなんですが、さ◇◇さんはどう思いますか?
Q:
[鉄腕アトム]時代にはパロディってあったんですか?
(さ◇◇さん)
A:
ありませんでした。
日本にパロディというものが紹介されたのは、[ケンタッキーフライドムービー]という、合衆国で作られた劇場用の映画がたぶん最初です。でも、当時のほとんどの人は、この映画のどこがおもしろいのか全然分からなくて、まるで人気が出ませんでした。そもそもパロディのもとが分からなかったしね。
80年代になると、[宇宙戦艦ヤマト](劇場版)が大成功して、大学生ぐらいの年齢の人たちを中心にしたアニメーションブームが起こりました。このブームはそれから10年ぐらいにわたって続くことになります。そのころ、[OUT]という雑誌が創刊されました。TVのアニメーションのシリーズや映画館で上映されたアニメーション映画を熱心に見ていた人たちは、この雑誌の熱烈な読者になりました。[OUT]にはパロディまんががよく載りました。パロディって、作品の内容を詳しく知っている読者にとっては、たまんないからね。まんがなんかのパロディが描かれるようになったのは、このころからだと思います。
Q:
今までにアニメーションのブームは何回ぐらいあったんですか?
(は◇◇さん)
A:
63〜64年の時みたいなすごいブームは、それからはもうなかったと言っていいと思います。
強いて言えば、上の説明にも書いた80年代の10年ブームがそれに近いかな。だから、個人的に断定させてもらっていいなら、ずばり2回ですね。
Q:
製菓会社は、アニメーションの番組で広告することで、そんなに儲かったんですか?
(は◇◇さん)
A:
広告だけならそれほど効果はなかったかもしれません。
この時期に、アニメーション番組を提供していた企業は、商品に番組のキャラクタのシールなどのおまけを入れて売るというビジネスを始めました。そして、そういう商品があるということを番組のCMで紹介したんです。そのため、[マーブル]、[すきやき](ふりかけ)、[牛乳用ココア]などの商品が大ヒットしました。
どのくらい効果があったかについては、それぞれの企業が公開している毎年の報告書に書いてあると思います。おもしろいから、ぜひ自分で調べてみてください。
Q:
先生はヲタクですか?
(は◇◇さん)
A:
子どもの時はヲタクだったけど、仕事にしてしまったので、ヲタクではなくなってしまいました。
Q:
いくつですか?
(は◇◇さん)
A:
いい練習になるので、は◇◇さんも推理してみてください。
[鉄腕アトム]を小学生の時に見ていたというのがヒントです。
Q:
元気ですか?
(は◇◇さん)
A:
作品を作るのがうまくいっている時は元気だけど、そうでない時は最低です。
最近は割りと元気かな。
Q:
新しいiPodって買いたいと思いますか?
(た◇◇さん)
A:
タッチっていう新しいシリーズのiPodのことだよね。機能は増えたみたいだけど、プレーヤとしての機能はかえって落ちているので、そんなに使いたくはないなぁ。何か新しい使い方ができたら買うかもしれないけど。
た◇◇さんだったらどう使う?
Q:
トトロ、好きですか?
(た◇◇さん)
A:
うん。
隣りにいてほしいです。
Q:
キン肉マン、好きですか?
(た◇◇さん)
A:
トトロからいきなりキン肉マン? た◇◇さんのアニメーションの見方って独創的ですね。
隣りにいてほしいです。ただ、うちの近所には吉野家がないんだけど...
Q:
[アトム大使]に[マグマ大使]、どっちも"大使"なのはなぜ?
(よ◇◇◇さん)
Q:
"アトム大使"と"マグマ大使"は名前が似ていますが、関係あるんですか?
(ふ◇◇◇さん)
A:
よ◇◇◇さんもふ◇◇◇さんも実に鋭い質問!!! ほんとうになぜなんでしょうね?
だいたい、[アトム大使]ではちゃんとアトムが大使をやってるからいいんだけど、[マグマ大使]のマグマって、どこが"大使"なのかよく分からないしね。
Q:
アニメーションブームのあと、虫プロはアニメーションを作るのはやめてしまったんですか?
(た◇◇◇さん)
A:
ブームが終っても、アニメーション番組がなくなってしまったわけではありません。かえって放送が増えたぐらいです。熱心に見る人が、怪獣ものなんかに取られて少なくなっただけです。虫プロももちろん活躍していました。
ブームの直後の作品としては、初めてのカラーシリーズの[ジャングル大帝]、これも初めての女の子向けのシリーズの[リボンの騎士]、実写との合成による[バンパイヤ]などがあります。いろんなことを試してみようとしていたみたいですね。
ただ、手塚さんは自分の作品をアニメーションに作り直すのがだんだんつらくなってきたんだそうで、虫プロの仕事は、ほかの作家の作品のTV化([国松さまのお通りだい!]、[佐武と市捕物控]、[アニマル1]、[わんぱく探偵団]など)に切り替わっていきました。た◇◇◇さん、それぞれもとはどんな人の作品だったのか調べてみてください(まんがばっかりとは限らないよ)。
Q:
[ウルトラQ]にはウルトラマンみたいなヒーローはいないんですか?
(あ◇◇さん)
A:
まだいません。レギュラーのキャラクタはいるんだけど、巨大になったり(次のシリーズで巨大化した人はいるけど。笑)スペシウム光線を出したりはしません。
65年の7月から新シリーズ[ウルトラマン]が始まりますが、このシリーズで初めて、怪獣と戦うヒーローとしてウルトラマンが登場します。
ウルトラマンは、怪獣と同じ大きさで活躍するという点では、世界を見渡してみてもかなり珍しい独特なヒーローです。私は、65年の日本にウルトラマンが登場した理由の一つとして、その直前から起っていたプロレスブームが重要だったんじゃないかと思っています。あ◇◇さんはどう思いますか?
Q:
今はいろんな会社がアニメーションの番組を提供していますが、どうしてこんなに増えたんですか?
(あ◇◇さん)
A:
そんなに増えたわけではありません。
ブームが終わりかけた時期におもちゃメーカーと出版が参入してきたのは一つの新しい動きでしたが、この時の体制が今でも続いています。
Q:
TBSはどうしていきなり[ウルトラQ]みたいな特撮ものをやろうと思ったんでしょうか?
(わ◇◇◇さん)
A:
さてなぜでしょう?
その少し前に、日本でも放送されていた[トワイライトゾーン](当時の日本での題名は[ミステリーゾーン])という合衆国のTVシリーズがありました。TVやプロダクションの人たちによると、これと同じようなものが日本でも作れないかと考えたのが[ウルトラQ]の始まりだったんだそうです。でも、わ◇◇◇さんが訊きたいのは、それならなぜほかのTVからはそういう動きが起こらなかったのかということなんだと思います。
日本のTVがアニメーションブームになってしまうちょっと前の時代に、子どもたちが見ていたのは[月光仮面]、[七色仮面]、[ナショナルキッド]などの変装(覆面をするだけなのは変身とは言えないなぁ)ヒーローものでした。そして、[月光仮面]を成功させてこの流れをリードしていたのがTBSでした。だから、TBSの人たちは、アニメーションとは別のタイプの番組にこそ自分たちの活路があると、きっと思っていたはずです。
[月光仮面]と言えば、あんまり大きくないキングコングみたいなのが登場する[マンモスコング編]というエピソードもありました。だから、ある意味ではTBSの特撮は"いきなり"ではないのです。[マンモスコング編]を放送していた時に、TBSの人たちは、TVでも特撮で番組が作れるかもしれないという自信をつけていたのかもしれません。
Q:
ふつうのドラマや映画館の映画と似ているしそんなに魅力があったとは思えないのに、どうしてTVの番組はアニメーションから怪獣ものに切り替わってしまったんですか?
(か◇◇◇くん)
A:
切り替わったとは言っても、アニメーションの番組がなくなってしまったわけではありません。むしろ65年に始まったアニメーションのシリーズの数は、ブームだった63〜64年よりも増えているぐらいです。熱心には見なくなったというだけで、そこそこにならアニメーションだって子どもは見ていました。
かえって、アニメーションがふえてしまったのがよくなかったのかもしれません。それだけ内容も表現も薄まってしまうし、だいたい、見慣れてしまうしね。
それから、子どもは背伸びしたいものですから、それまではアニメーションに熱中していたけれど、少しおとなっぽい番組を楽しんでみようかと考えた子どももいたんでしょうね。
怪獣ブームもそんなに長く続いたわけではありません。2年ぐらい続いただけで、妖怪ブーム([悪魔くん])、さらに変身ブーム([仮面ライダー])へと文化は変化していきました。
こういったそのあとのことについては話せる時間がなかったけど、か◇◇◇くんがぜひ自分で調べてみてください。きっとおもしろいと思います。
Q:
怪獣ブームの時期には、アニメーションのシリーズはいくつぐらい放送されていたんですか?
(ま◇◇◇さん)
A:
[ウルトラQ]、[ウルトラマン]、[マグマ大使]などが放送されていた65年には、少なくとも12本の新しいアニメーションシリーズが始まっています。66年にも8本以上のシリーズが始まっています。63年には5本、64年には3本でしたから、ブームが終わったとは言っても、かえってシリーズは増えていたわけです。
ま◇◇◇さん、とってもいい質問でした。
何か変化があった時には、気分で変化したと言うのではなくて、実際にそれを数えたり測ったりして、その数量の動きを見せるようにしてください。意外な事実が見つけられるはずです。
Q:
怪獣の次は何がはやったんですか?
(お◇◇◇さん)
A:
妖怪です。砂かけ婆あとか、子泣き爺いとか、よくいるでしょ(見たことない?) 。
66年に、[少年マガジン]で[悪魔くん]というまんがの連載が始まりました。作者はそれまでは[ガロ]というもっと上の年齢向けの雑誌で怪奇まんがを連載していた水木しげるさんで、読者の年齢を広げるために抜擢されました。この連載が、同じ年の10月に特撮シリーズとしてTV化されました。
TVの[悪魔くん]の初期のエピソードは、悪魔を従えた少年が新作の(時には巨大な)怪獣と戦うという形式で作られていました。怪獣ものとして作ろうとしていたことが見え見えですね。でも、ちょっと違う番組にした方がいいということになったらしく、すぐに、文学や伝説で有名な妖怪が登場するシリーズに変わっていきました。
まんがの連載の方は、何か事情があったらしくてすぐ中止になってしまいました。これに代わるかたちで、水木さんは[墓場の鬼太郎]というシリーズを少年マガジンに不定期連載するようになっていました。[ゲゲゲの鬼太郎]の最初のシリーズは、このまんがをもとにして、68年からアニメーションのシリーズとしてTV化されました。
妖怪ブームは、アニメーションや怪獣のブームと違って、それほどの力はありませんでした。怪獣が飽きられていった時期の空白を妖怪が埋めていたと理解しておいた方がいいでしょう。
Q:
ちょっと前に、[怪(もののけ)]というアニメーションをTVでやっていたのを見たんですが、とっても特徴的なアニメーションでした。
(お◇◇◇くん)
A:
[怪(もののけ)]は、シリーズとして放送するのとは違って、短い作品を作ってはTVやDVDでリリースしていくという考え方で作られている特別な作品です。表現もかなり変わってたでしょ。
アニメーションは、TVのほかに、映画館で上映する映画とか、ミュージックビデオとか、CMとか、いろんな所で使われていて、それぞれ作られ方が全然違っています。芸術としてアニメーションを作っている人だっていっぱいいます。実は私もそういう人たちの一人なんですが...
こういったアニメーションは、まんがとか、もともと描かれている"原作"の絵や話しに合せて作る必要がないので、自由に何でもできるすごく強力な表現の手段になっています。DVDや特別な上映会(たとえば来年の8月に広島で開かれる国際アニメーションフェスティバルとか)でなら、こういうタイプのアニメーションを見ることができます。[怪(もののけ)]やその続編も、DVDでなら見ることができるよ。[ざしきわらし]がお勧めです。
お◇◇◇くんも、(アニフェスはちょっと大変だけど)ぜひ、デイスカスなどで借りてみてください。
Q:
[ルパン三世]の最初のころのオープニングは、聞き慣れているのとは全然違うって聞いたんですが、ほんとうですか?
(お◇◇◇くん)
A:
[ルパン三世]でなくたって、長く続いているシリーズのオープニングはどんどん交替していくものです。そういうのってふつうですよ。
[ルパン三世]のオリジナルのシリーズでは、二つのオープニングが使われました。かなり年月が開いてから77年に放送が再開されましたが、その時に前のとは全く別の曲が新オープニングとして作られました。ルパンのテーマって言われてお◇◇◇くんが思いつくのは、たぶんこの時の曲の方だと思います。それからかなり長い間使われていたしね。
最初のシリーズも含めて、[ルパン三世]は全話がVHSやDVDになっています。ぜひ実際に見て(というか聞いて)みてください。私は最初のシリーズの最初のが一番好きなんだけど、お◇◇◇くんはどうかな?
Q:
今のアニメーションのシリーズでは、変態的なのとか憎悪に満ちたのとか、魅力的な悪役がたくさん登場しますが、昔のアニメーションではどうだったんですか?
(お◇◇◇くん)
A:
昔のアニメーションでも同じです。
ただ、当時は、地方局や輸出先の外国では東京局とは違う順番で放送することがあったので、なるべくレギュラーは(特に悪役は)作らないというのが共通の方針だったようです。
このころの悪役って、全体に、間抜けなやられキャラとして設定されていることが多かったんですが、例外は(さすがにおとな向けの)[エイトマン]に登場するデーモン博士です。彼はどこかの国(おそらく当時のソ連)の工作員たちのリーダーで、超兵器でエイトマンと闘ったり、共通の敵に対しては協力したりして活躍します。
当時の作品をDVDなどで実際に見て、ほかにはどんな悪役がいたかぜひ調べてみてね。
Q:
先生はアニメーションが好きなんですか?
(あ◇◇くん)
A:
63年のブームの時期の、あ◇◇くんたちに見てもらった4シリーズについては、ほとんど全エピソードを見たと思います。
そのあとの時期の作品については、そこまで完璧に見たシリーズは数えるほどしかありません。(最初のシリーズの)[ルパン三世]、(同じく最初の)[宇宙戦艦ヤマト]、[機動戦士ガンダム](ZZまで)とこの時期のサンライズのいくつかのシリーズ、[うる星やつら]、[新世紀エヴァンゲリオン]、[攻殻機動隊]、[妄想代理人]ぐらいかな。
TVのシリーズに限って言うと、DVDとか映画館のアニメーション映画とか、見ないといけないものがほかにたくさんありすぎるので、最近はあんまり見られないんです。アニメーションって、やっぱり作るのがおもしろいんだけど、そっちに時間を使ってしまうから、なかなか見ていられないんだよね。
Q:
いつから合成ってできるようになったんですか?
(か◇◇◇さん)
A:
映画は1890年代に初めて作られるようになりましたが、すぐにいろんな方法で合成が行なわれるようになりました。映画は最初から合成が可能なものとして登場したと言ってもいいでしょう。
ただし、最初のうちは、合成するための方法を場合によっていろいろ工夫しなければなりませんでした。それがいつでも一定の手順で手軽にできるようになったのは、オプティカルプリンタという装置が発明されてからのことです。日本では円谷プロダクションが[ウルトラQ]で初めてこの装置を使いました。
その円谷プロダクションだけど、TYOという会社に吸収されて、とうとうなくなってしまったらしいですね。
現在では、オプティカルプリンタでやっていたような作業は、ほとんどコンピュータを使って行なわれています。みなさんにいろんな写真を見せるのに使っていたコンピュータだって、いつもはビデオの合成なんかの作業に使っているものです。もしかすると、みなさんの学校の実習室の設備でもそのくらいのことはできるようになっているかも...
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