作品記録●[QMF]


(タイトル)


時代の穴はふさげたのか?
[ロックじゃ遅すぎる!]

一泉どうじ + 井戸良弘

http://www.infonet.co.jp/apt/March/QMF/Ido/OldRock/homage.html



 この作品は一言で言って時代が生み出した作品という印象がありました。松田優作が出演していたあの一連の映画やドラマなんかのような、やるせない思いがいっぱいつまった映画でした。
 技術的には未熟な点がいっぱいありました。カメラワークや編集の間合い、アフレコ、しかし、それを補ってあまりある情熱が感じられました。これは半端じゃないですね。

 特にヒロインの貝を演じていた女優さんが良かった。技術云々より、説得力がありました。他の俳優さんも決して「うまい!」という気はしないのですが、迫力というか荒削りの説得力がありました。いいですね。100分という上映時間を引っぱっていけたのは、出演者の力によるところがかなり大きいと思います。

 ストーリー的に言うと、後半からバイオレンスがかってくる必要性が、少々引っかかりますが、制作した時代を考えると納得してしまいそうな気がします。あの時代というのは、なにか、心の中にぽっかり空いた穴が見えていました。その穴を生めようとして私は創作を始めましたが、今、穴がふさがっているのか、それともただ見えなくなっただけなのか、考えてしまいました。
 長い作品ではありますが、一度見ておいて損はないものだと思います。
一泉どうじ
96/07/10 22:34


 初めまして。QMF [ロックじゃ遅すぎる!]の監督の 井戸= 石原です。ニフティの映画フォーラムで拙作にコメントをいただいてありがとうございました。

 ここ10年ほど、新作
[忘れなくてもいいから]をさすりさすりしているんですが、なかなか完成にまでこぎつけることができないまま現在に至っています。今回のように、観客の方からレスをいただくことはほんとうに励みになります。

 
ヒロインを演じてくれた田坂真理さんのことですが、女優としての彼女に出会えたというのはほんとうに生涯の幸いだったと思います。その後、映画ではいくつかの失敗といくつかのほどほどの成功を得ましたが、それは結局、俳優との出会いの失敗と成功だったように思えます。

 ただ、俺は彼女からたくさんのものを受け取ることができましたが、彼女には何もしてあげられなかったのではないかという思いが強いのです。それが今でも心残りです。
 話は違いますが、こういう無念の伝説というものがあって、そこから生まれる映画とか、文芸というものもあるのだと思います。
 彼女はその後、
QMFと交流のある南宝企画という集団の[黄昏の街](これは85年ごろの作品で、PFFでそうとういい所まで行ったはずです)という作品に出演されましたが、それ以来、連絡をとっていません。

 
ストーリーのことを話します。映画の前は演劇をやっていて、そっちはわりと楽に人を殺してもかまわない世界、といいますか、人の生き死にがかかわるくらいの話だからここで幕を開ける必然があるんだ、というような説き伏せ方をする世界だと思うんです。独断ですが。映画ではそこまでしなくてもいいんですね。それを批判なく持ち込んでしまったなぁと思っています。
 ただ、舞台での、ということならルールは守っていると思います。それは、見慣れたことがない異常な状況であっても、その状況を引き起こしてしまったキャラクタの情緒や論理には整合する、という原則です。感情や状況の前提ができて初めて物語は次の段階に進める、と言ってもいいかもしれません。ただ、それが立て続けに起こってしまうのはこっちの世界ではめったにないことで、それが起こってしまうのが架空の世界の特徴なんでしょうね。
 どうもありがとうございます。今後もよろしくお願いします。
井戸良弘


 はじめまして、石原さん。一泉です。
 新作、がんばって完成させてください。期待しています。
 田坂さんの場合、喜怒哀楽の喜と哀の表現に長けた人だと思います。ただ単に表現するだけでなく、見る人に共感をもたせるというのは貴重な才能だと思います。
 アマチュア映画の場合、わたしはキャスティングが命だと思っています。役者さんもボランティアで出てもらっているので、あまり無理は言えませんしね。
 あとはいかに、その人の良いところを引き出すかが監督の技術という事になりますよね。そのために、心理学や、観相学などをかじったりしますが、まだまだ奥の深い世界です。
 [ロック] の場合、そういう意味でも成功している作品だとおもいます。
 無念の伝説のこと[ロック] を観ると納得できます。
 そうですか、演劇ですか、わたしも妻がアマチュアの舞台女優だった関係で年数回ですが、アマとプロの舞台を見にいきます。
 舞台というのは限られた舞台空間で最初から最後までやってしまうので、「一種のお約束の世界」があるとおもいます、だから少々唐突な展開でも納得してしまうところがあると思います。しかし、映画はそのへん結構作り込んでリアルにするので、その辺が少し違うのかな、まあ舞台みたいな演出をする映画もありますけど、[ロック] は演劇をしてらしたわりには演出としては正当な映画的演出でしたね。
 今後ともよろしくおねがいします。
一泉どうじ



以上の記事は、一泉さんの許可を得て、ニフティサーブの掲示板に掲載された記事を再掲載し、関連する私信を追加したものです

一泉さんはウェブ[濱田屋][濱田アルコール研究所]を主催しておられます

構成に当たって、引用をリンクに直し段落を立てるなど、一部の表現を改めました



Copyleft(C) 1996-02, by Studio-ID(ISIHARA WATARU). All rights reserved.
このページに自由にリンクを張ってください

このページへの助言や感想や新しい情報を歓迎します
下記まで連絡をいただければ幸いです
isihara@tokiwa.ac.jp


最新更新
02-12-18

このページは インフォネットのウェブサーバを通じて 発信させていただいています