作品記録/[三月劇場]


(イメージ)

[距離]
6
[階段]
秋想一


http://www.infonet.co.jp/apt/March/Aki/Distance/Stairway.html



 ボクは空を飛ぶ夢を見たことがない。ボクが小さい頃よく見た夢は、階段をおソージしている自分の夢だった。
 ずいぶんと長い階段だった。ポクは時々、階段に座って、ほおづえをついて、誰かが登って来るのを待ったもんだった。確かに数人の人たちが登って来た。でも、彼らはボクなんかに、まるで気付かないで、どんどん階段を登って行っちまうんだ。
 ボクは誰にも語りかけることもできずに、幼児か痴呆のように、何度も同じように、機械的におソージをする。雨上がりの公園に立ちすくむ小犬のように、階段の真ん中で、昨日別れたあんたのことなんか思い出しながら、まだあんたを知るはずもない、8才のボクは、目の前に広がる虚空に何かを見つけようとして、じっと階段の向こうを見つめているんだ。


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[三月劇場]


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99-02-28

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