作品記録/[三月劇場]


(イメージ)

[距離]
1
[アダムとイブ]
秋想一


http://www.infonet.co.jp/apt/March/Aki/Distance/AdamEve.html



 ある日、イブは八百屋さんにお買物に行きました。イブはリンゴを二つ買いました。そのリンゴは1個80円で、とってもおいしそうでした。イブは思いました。このリンゴは、冷蔵庫で冷やしておいて、明日食べよう。



 さて、だんな様のアダムは少々ノイローゼ気味でした。というのは、彼は絵描きだったのですが、最近、目がどんどん見えなくなってきていたからでした。そうして、人間を見ていると、その人間の顔がぐじゅぐじゅに腐ったトマトに見えてくるのでした。
 アダムが嫌なたのまれ仕事に疲れて冷蔵庫を開けると、そこに、二つのリンゴがありました。彼は、そのうちの一つにヒモをつけて部屋に吊り下げました。
 次の朝、イブが冷蔵庫を開けると、リンゴが一つしかありません。あら、あの人食べちゃったのね。そう思って、イブは自分の分のリンゴを皮もむかずに食べてしまいました。
 あとでイブはもう一つのリンゴが部屋に下がっていることを知ったのですが、それを見ても何も言いませんでした。何故って、イブは最近、だんな様の様子がおかしいことに気付いていたからでした。
 リンゴはだんだん腐っていきました。ある日、アダムが触れようと手を差し出すと、ずるりとリンゴの実が落ちて、あとに残ったのは、小さな、よく切れそうなナイフでした。
 その日アダムは自殺しました。ナイフで手首を切って。



 イブには生命保険がたっぷり手に入りました。昔からリンゴはこう呼ばれています。"チエの実"と。


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