資料シート/[三月劇場]

[QuickTime]

http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/bookshelf/QuickTime.html



 ムービ(ビデオとサウンドの複合体。movie)を記録/転送するために定められたフォーマット(書式。format)の一つ。

 クイックタイム




 音楽や映画や紙芝居は、時間軸をもった(=時間の進行にともなって絵や音が変化していく)メディアだ。[QuickTime]は、こうした特性を備えたメディアを扱うための特別な機能だ。

 QuickTimeの最大の特徴は、時間軸をもっているメディアは、すべて全く同じようにして取り扱えることだ。したがって、アプリケーションを作る場合、映画と音楽と別々のプログラムを書く必要がなくなる。このため、QuickTimeを使って作られたアプリケーションのほとんどは、映画に使えるなら音楽などのそのほかのすべてのメディアにも使えるようになっている。

 QuickTimeでは、QuickTimeが扱えるコンテンツを収めておくファイルのフォーマットも定めている。このフォーマットもQuickTimeと呼ばれている。Windowsやunixでは、QuickTimeファイルは名前の最後を".mov"などにする慣わしになっている。
 [QuickTime]は1〜2分の短い映画の記録/転送では事実上の標準の一つになっている。また、ムービ、サウンド、字幕などの単独の記録/転送にも広く使われている。

 ウィン系のコンピュータでは、QuickTimeに相当する機能/規格としてWindowsMediaが使われている。




意義


 90年ごろから、ムービが何とか再生できるぐらいの性能のコンピュータがパーソナルコンピュータのクラスにも現われるようになってきた。それによっていろいろな問題がはっきりしてきた。
 まず、それまでのムービの多くは、再生するコンピュータの性能に合わせて、重さを調節しておき、再生が始まったらあとはその重さによって自然に速さが合うように作られていた。つまり、そのムービを違うコンピュータで再生すると進み方がが速くなったり遅くなったりした。また、再生している間にほかの作業が始まったり終わったりしないように気をつけなければならなかった。
 また、ムービと合わせてサウンド音楽を再生したり、字幕を表示したりすることが必要になった。ところが、それぞれはほかの何かが再生されていると正しく再生できないので、それが壁になっていた。同じ理由で、合成するなどの目的で二つ以上のムービを同時に再生することも難しかった。
 これらの問題を解決するには、誰かがいつも時刻を調査していて、いくつものムービやサウンドがちょうど正しいポイントを再生しているか確認し、必要なら待ったり飛ばしたりしなければならない。
 このような機能はそれぞれのムービやビュワがばらばらにやることはかえって難しい。今度はそれらがたがいに衝突してしまうからだ。そこで、この機能をコンピュータのなるべく基礎の部分に作り込もうとして[QuickTime]が作られた。
 [QuickTime]は、Apple社が開発し、現在でも強化が進められている。しかも、[QuickTime]の機能は、所定の規約に沿って情報が組み立てられてさえいれば、Apple社のコンピュータだけでなく、他社の全く機能が違うコンピュータでも利用できるようになっている。このため、ウェブとして公開されている映画、音楽、録音などのマルチメディアはほとんどが[QuickTime]の規約に合わせて作られている。


構造


 [QuickTime]の規約にしたがって表現された映画や音楽をQuickTimeムービという(この科目でムービと言っているのより広い範囲を指している)。
 QuickTimeムービはいくつものトラックが集まってできている。それぞれのトラックには、

・ビデオ(この科目でムービとよんできたもの)
・ビデオに対する効果
・オーディオ(同じくサウンドとよんできたもの)
・オーディオに対する効果
音楽
・字幕
・スプライト
・AV機器の制御

として何を使うか、そのどの部分をいつからいつまで再生するかを記録しておくことができる。その上、ビデオトラックやオーディオトラックをさらにそれぞれ複数ずつ持つこともできる。これらは重ねて同時に再生したり、日本語版と中国語版のように場合によって再生し分けたりすることもできる。
 再生するビデオやオーディオの要素そのものをクリップという。クリップは、同じQuickTimeムービの中に記録しておくこともできるが、よそのドキュメント(=ファイル)に記録してあってもいい(これは機種によっては不可)。
 クリップをそのままムービの中に含める場合には、そのせいで記録/転送しなければならない情報の量が大きくなってしまわないように、情報の中の重複をまとめたり、目立たない部分を捨てたりする必要がある。この処理を圧縮という。また、圧縮をしたりそれをもとに戻したりする機能のことを、QuickTimeではコーデック(<coder-decoder=符号化/反符号化器)と呼んでいる。QuickTimeでは用途に応じていろんなコーデックが準備されている。ビデオ部分については、以下のようなコーデックがある。

名称
用途
容量
品質
生成にかかる時間
video
実写



animation
コンピュータグラフィックス
(陰影がある)



graphics
コンピュータグラフィックス
(陰影がない)



JPEG
実写(スチル)
○○

×
Cinepak
実写
○○

××
component video
実写



Sorensen
実写
○○

××

 QuickTimeムービからは、いろんな既定の規格にしたがって記録されたクリップを引用してかまわない。かなり多くの形式のメディアがそのままクリップとして使えるようになっている。たとえば、ビデオはQuickTimeムービに特有の形式(これだけでも4種類以上ある)でもMPEGでもかまわない。もちろんあまり特殊なものは性能の高いコンピュータでないと再生できないが。
 再生が始まると、コンピュータはいつも時刻を確認して、その時刻に再生されていなければいけないクリップの、再生されていなければいけないポイントが再生されているようにする。コンピュータの性能が十分なら、1m秒(=1/1000秒)ごとの制御が可能だ。(特にビデオで)再生が間に合わない場合は途中を飛ばして、少なくともその時刻だけは正しい所が再生されるようにする。この作業が正しく行なえるように、それまでの再生のようすからこのままだと将来はどのトラックがどう遅れそうか予想も行なう。


使用


 QuickTimeフォーマットのファイルはQuickTimePlayer(▽図。初期の版ではMoviePlayerと呼ばれていた)を使って再生したり加工したりすることができる。QuickTimePlayerはそのほかの(=PICTやVRなどともかく視聴覚に関わるメディアなら何でも)フォーマットのファイルにも対応しているので、これがあればほとんどのメディアは再生できる。



 QuickTimeにはMacOS用、Windows用、unix用があり、どれも無料で配られている((QuickTimePlayerも含まれているが加工もできる版は有料)。もっとも、MacintoshシリーズのコンピュータならQuickTimeはもともと組み込まれているので、改めてインストールする必要はない。

 現在の版では、次のような一連の作業を経ることによってQuickTimeが使えるようにすることができる。
・アップルのQuickTimeを配っているウェブにつないで、QuickTime(実際にはそのうちのQuickTimeUpdateというアプリ)を送ってもらう。その場ですぐ受け取れる。それを説明にしたがってインストールする。
・QuickTimeUpdateというアプリが使えるようになるので、インタネットにつないでからそれを起動する。少し時間はかかるが、QuickTimeの本体が送られてきて、自動的にインストールされる。
 なお、マックならQuickTimeのスタンダード版がもともと使えるようになっているので、こうした作業は必要ない。必要に応じて改版(QuickTime設定かQuickTimePlayerを使って行なう)をしておけばいい。





参考にした資料


QuickTime
日経マルチメディア、Vol.95、No.09、pp.181
用語辞典


デジタルクリエイターズ連絡協議会(編)
96年度版マルチメディア事典
(ソフトバンク:刊)


川村渇真
満を持してQuickTimeが遂に登場
マルチメディア時代への先駆になるか
その現在と未来の可能性は?
MacPower、Vol.3、No.07(92-07)、pp.2-3
ほどよい解説/経過+意義


川村渇真
QuickTimeの基本構造を検証する
MacPower、Vol.3、No.07(92-07)、pp.4-7
ほどよい解説/機能+構造


Macintoshのマルチメディア拡張QuickTime
日経バイト、Vol.92、No.03、pp.311-327
QuickTimeムービの構造をもっと詳しく知りたい人のために。


もっとしっかり調べるために


ASCII編集部
QuickTime2.5
ASCII、Vol.20、No.08、pp.406-407(96-08)
強化された新しいQuickTimeの紹介。近い将来のこの方面の技術の傾向が分かる。
ただ、実際にムービを作ったことがないと意味がつかみにくいかもしれない。


新しいQuickTime3.0はQuickTimeムービーだけでなくMPEGやAVIの再生ができるというが...
ASCII、Vol.21、No.05、pp.314-315
もう一つの有力なマルチメディア形式であるActiveMovieとの比較。
ほかの形式のことも知っておきたい人のために。
この記事も、実際にムービを作ったことがないと意味がつかみにくいかもしれない。


再生能力の大幅な向上、音楽トラックとMPEGサポートなどで新たな可能性を提供するQuickTime2.0
HyperLib、Vol.03、pp.34-36


QTムービーにトライ!/ムービークリニック
MACLIFE、Vol.94、No.09、pp.309


QuickTime2.1の新機能
MACLIFE、Vol.95、No.11、pp.188-189


QuickTime2.5リリース!
MACLIFE、Vol.96、No.09、pp.162-163


QuickTime進化論
林信行 MacPower、Vol.07、No.08(96-08)、pp.116-119


QuickTime2.5
MacUser、Vol.03、No.09、pp.196-200


QuickTime3.0
ASCII、Vol.21、No.09、pp.370


QuickTime
(http://www.infonet.co.jp/apt/March/library/QuickTime.html)
(ほかの資料へのジャンクション)


このページに記載している情報の多くは本文の末尾に掲げた資料によっています。また、科目[メディアテクノロジー論]を履修した以下のみなさんが調査してくれました

黒沢一彦
(敬称略)

映像 | 音楽 | サウンド

各科目


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