4-2. ドリー視覚の素朴な調達  続いて、すでに従来型として作成されているウォークスルに対して、追加されるべきドリーを生成する実際的な手段が存在するか検討する。  ドリーを生成する素朴な(しかし実際的ではない)方法としては、次のような方法が考えられる。 ○追加レンダリング  ウォークスルが対象としている空間が、コンピュータグラフィックスとして定義されている場合は、ドリーの行程を通じて視覚される光景をアニメーションとしてレンダリングすることによって、ドリー視覚は生成することができる。 ○再取材による追加撮影  実在する空間を再現するように作られたウォークスルの場合は、ドリー視覚素材を作成する最も素朴な手段は、実際にその行程を実行しながらビデオを撮影することである。つまり、移動車やドリー台にビデオカメラを搭載して、再現しようとしている行程に沿って移動しながら撮影を行なう。  しかし、これらの手段は以下のような理由から、一般には採用が困難である。 (1) 歴史性または一過性の対象の消失  対象の主要な要素として、最初に取材した時には存在したが、その後、撤去されて存在しなくなった建造物などが含まれている場合、再取材は不可能である。また、これとよく似た場合として、パレードの人出のように、二度と再現できない空間も再取材は不可能である。 (2) 大幅なコストの追加  見回しの素材は、方式にもよるが2〜高々十数枚の写真の撮影によって完全に準備することができる。これに対して、ドリーを生成するためには、ドリーの始点から終点までの、十分に多数で一定の間隔の経過地点を標本として何回も撮影を行なわなければならない。そもそも、見回しの場合に比べて、ドリー視覚素材を確保するために必要な撮影(またはレンダリング)の回数は桁違いに多いのである。  効果の向上のためであることを考えると、再取材の方がより高いコストが発生するのは本末転倒である。  空間がグラフィックスで定義されている場合でも、実際上は、必要な作業が追加レンダリングだけで済むわけではない。 (3) 定義の増強  見回し視覚をレンダリングするために構築されたグラフィックスには、有限個の立ち位置に対する見回しに必要な要素しか含まれていない場合がある。この場合は、ドリーの全経過地点でのレンダリングが得られるようにするために、未定義の要素に対応する形状や表面の情報をさらに追加しなければならない。