[左耳の精霊]
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http://www.infonet.co.jp/apt/March/QMF/Yosimatu/SpiritusLoci/ scene/22.html




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インターネットカフェ"T-ZONE"店内


 鬼山、無表情のままテーブルにつく。
 鬼の形に似たタングラムのパズル。
 御影から受け取った黒いフロッピーを端末に入れる。
 ふと、モニターの五百羅漢の石仏の写真に目が止まる鬼山。

水樹の声「それが、あの五百羅漢のある村?」

常盤の声「石の中の髪の毛と、直接関係があるかどうかはわからない。ただ・・・」

(女狐が広々とした稲田に立ち、空を見上げているインサート・カット)

 Fetch(転送ソフト)の犬のアイコンが走る。
 黙々とデータの転送作業をする鬼山。
 モニターの石仏の写真が気になる。

水樹の声「ただ?」

常盤の声「日露戦争の頃と言えば、農村に残された女達が出征した夫の無事を祈って、千人針をつくって、黒髪を神社に奉納していたという記録がある」

(黒髪の端を切り、千人針を刺して奉納するアップのインサート・カット)

水樹の声「我孫子市の黒髪塚とか?」

(女狐が塚の前で空に向かって鈴をかかげ、シャン!と鳴らすインサート・カット)

 転送を終えた鬼山、石仏のホームページに興味を持ち、見ている。
 [撮影者プロフィール]をクリックすると、常盤が研究室で撮った水樹の写真が表示される。
 目を凝らす鬼山。

 (【平和公園・慰霊碑アーチ前】で、炎の向こう側でうずくまる水樹の横顔を、鬼山の視点から撮ったカットバック)

 何かを思いついたように、メーラーを立ち上げる鬼山。

常盤の声「もちろん、それが直接、石の中の髪の毛と関係があるとは思えない。けど、何か気掛かりなんだ。人食い鬼を真似た事件、黒髪の奉納の話、まるで・・・不揃いなモザイクのパズルを渡されたみたいだ」

水樹の声「不揃いなモザイクのパズル・・・」

 鬼山、自分のフロッピーを取り出しポケットに入れて、席を立つ。

(うつむきかげんな女狐の意味有りげな微笑みのインサート・カット)

医者の声「3か月ですね。順調です。」



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98-09-10