[左耳の精霊]
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平和公園・炎のモニュメント裏(昼間)


 炎をバックに浮浪者の老人(シーン#8インサートの老教授にも見える)が大声で演説をしている。
 内容は旧約聖書・創世紀第6章第13節以後。
 酔っているのか?いくぶん呂律がまわってない。
 かすれそうな声で叫んでいる。

老人「そこで神はノアに仰せられた。"すべての肉なるものの終わりが、わたしの前に来ている。地は、彼等のゆえに、暴虐で満ちているからだ。それで今わたしは、彼等を地とともに滅ぼそうとしている。"」

 鬼山、老人に目をやりながら、遠巻きに通り過ぎようとする。
 ドクン!突然歪む鬼山の顔。

老人「"わたしは今、いのちの息あるすべての肉なるものを、天の下から滅ぼすために、地上の大水、大洪水を起こそうとしている。地上のすべてのものは死に絶えなければならない。"」

 鬼山の中の鬼が疼いている。超低周波の地震(微震)が起こる。
 老人の足元の水面の縁に、小刻みな波紋ができている。
 誰も地鳴りに気付かない。
 鬼山だけが、それに気付き、あたりを見渡す。
 ポケットから出した銅鈴が低周波にかすかに共鳴して、チチチッと小刻みに震えている。



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98-09-10