制作ノート
[HAKO-MANDALA]

マンダラ/Cにおける
映像的要素の制作



[MANDALA]プロジェクト参加中
 このページは、[Navigator](2.0版以後)および[Kevin's Multimedia Plug-in]に相当する機能が使われていることを想定して作られています
一部の要素は、容量や保守のつごうにより、アクセスの手段によっては閲覧していただけない場合があります


石原亘
97-05-05



注意

この資料では、マンダラ/Cの映像的要素が何のために、また、どのようにして制作されたか解説しています。これは、作品を鑑賞していただくのに特に役立つものではありませんし、場合によっては、かえって作品と自然に触れ合っていただく妨げになるかもしれません。もし作品をこれから見ていただくのであれば、この資料はそのあとで参照してください。




 [HAKO-MANDALA]のうち、マンダラ/Cはオブジェ、音、映像[>]などの要素から構成されています。特に、音と映像[>]は、インタラクティブな属性をもっていて、会場の観客の行動に反応して変化します。



 マンダラ/Cの映像は、テープにあらかじめ録画されているビデオ[>]の映像と、その上にオーバラップして表示されるQuickTime形式のデジタルムービ[>]とから構成されています。このうち、インタラクティビティに関与するのはデジタルムービ[>]の方です。ビデオ[>]の映像は固定されていて、インタラクティビティには関与しません。



 マンダラ/Cのオブジェには、左/中央/右の3か所にセンサが埋め込まれています。これらのセンサは、近くで何かが動くとそれをセンスすることができるので、観客が通り過ぎたことを関知して作品の反応を制御するコンピュータに報告します。
 デジタルムービは3本あり、どこのセンサから報告があったか、つまり、観客がどこにいるかに応じて、それぞれに特定のものが、それまでのものに代わって再生を始めます。





報告源
解釈
遷移期の映像
安定期の映像
左のセンサ
観客が上手に移動
左への流れ
左からの光
中央のセンサ
観客が正面に移動
上への流れ
上からの光
右のセンサ
観客が下手に移動
右への流れ
右からの光


(計約150KB)
(計約400KB)


 センサが観客をセンスしてから約4秒の間が遷移期で、観客のいる方向に向かう流れを表現するムービが反復して再生されます。
 遷移期が終わったあとの期間が安定期で、これはどれかのセンサが次の観客をセンスするまで続きます。この期間には、観客がいる、またはいた方向からの光を表現するムービが反復して再生されます。
 こうした制御はOpcode社の[Max]のプログラムとして組まれています。[Max]は音楽などの視聴覚要素を制御できるプログラミング支援システムで、もともとIRCAMで作曲と演奏を支援するソフトウェアとして開発されました。


制御プログラム[Player]ソーステキスト
 このドキュメントの記述形式(Description)およびMIME型はtext/textです。
 [Kevin's]などのプラグはこれをテキストムービとして表示しようとすることがあります。これはトラブルの原因になるので、一度ディスクに保存してあとで見ていただくよう勧めます。
 [Navigator]なら、[option]キーを押さえたまま上の"Player"と表示されている部分を叩くとディスクに保存させることができます。

 安定期の映像は、基本図形を描いた映像の上に、縮小桁名のカウントダウンを重ねるようにして作られています。



 10、100、...に対して、十、百、...といった桁名があるのと同様に、あまり使われませんが1/10、1/100に対しても分、厘、...(本来のシステムでは割は用いない)という桁名がついています。こうした縮小桁名は、このインスタレーションの映像の発想のベースになっています。
 実際には使うはずもない遠くの桁にまでていねいに与えられた名前の連なりは、桁が進むにしたがって細かく薄くなり、やがて滑らかに無に解け合っていきます。それを見ていると、無限を忌避するのでもなく、逆にすべてを理解したいとあせるのでもなく、自然に接していこうと覚悟した人々の想いが、そこに込められているような気がします。
 上に延びていく拡大桁名は、無限の大きさに対して与えられた、言わば実在する無限への接近です。それに対して、微小桁名は、五感でも知覚できる、0の有界な近傍にさえ見ることのできる、想像と思考の中に初めて存在できる無限です。何重にも細分されていくマンダラ、何重にも包まれた層の極限としてしか理解できないマンデルブロート集合の境界、実は収束する有理数の列として定義されている実数と同じように、目の前に実在するのが感覚できるのに思考はそれを把握できない、という心の中の無限です。心を引かれずにはいられません。






 基本図形は、上下左右に球が並んでいるもので、遷移期の映像と安定期の映像との共通のモチーフです。これは、仏教のマンダラの構造と相似に構成されています。このアニメーションはFractalDesignの[RayDreamStudio]を用いて制作しました。


 

配置図とレンダリング
([RayDreamStudio]の表示より)



 ビデオテープには水底に写った水面の影が録画されています。この録画は約20分で循環します。



 マンダラ/Cは、中村滋延山田実石原亘長嶋洋一の4名の協働によって制作されています。


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